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東京の明るい夜空とは、全然違う。俺はその満天の星空の上に、自分の将来の事を思い描いてみた。
「あのさ、渡兄ィ」
「何?」
「俺、将来はホテルマンになろうかな」
気恥ずかしくなって頬を掻きながら、ぼそぼそと呟く。
「……ちょっとベルボーイのバイトしたからって、安直かな?」
まん丸になった目が、俺を見つめる。俺が珍しく明確な目標を語ったことに、やっぱり少し驚いたんだろうか。でも渡兄ィはすぐに、俺の決心を後押しするように微笑んでくれた。
「いいと思うよ。頑張ってみたら?」
その顔を見て、心の中にぽっと火が灯る。
俺は両手を上に上げて思いっきり伸びをしながら、清々しい気分で宣言した。
「よっしゃ、目標決めた! 俺、頑張って進学して、大学卒業したら軽井沢のホテルに就職する!」
「えっ? 軽井沢に?」
「うん。それから体もガッツリ鍛えて、もっと体重も増やす。制服が合わないと困るから、そんなに脂肪はつけたくないけど」
渡兄ィは目をぱちくりさせながら、俺を見つめた。
「渡兄ィが納得するような、いい男になってやろうっと」
ポカンと口を開けいる渡兄ィを指差して、俺は笑ってみせた。
「俺を納得させてどうすんの?」
渡兄ィも弾けるように笑いだした。
腹を抱えて笑い、お互いに肩を小突き合う。しばらくして渡兄ィは、
「……待ってるよ。オレもそれまで画家を辞めないように、頑張るよ」
と、優しく微笑んで、笑いすぎて目尻に浮かんだ涙を指で拭いた。
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