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「じゃあ、俺もう行くけど……またアイツが来ても、ヨリ戻そうとすんなよ」
「もう大丈夫だって」
眉間にしわを寄せながら念を押すように忠告すると、渡兄ィは呆れたように笑った。
もうすぐ東京行きの新幹線が来る時間だ。
軽井沢駅の改札の前は、少し混雑している。その人ゴミを避けるように、俺と渡兄ィは駅構内の隅に立っていた。
「渡兄ィ、冬休みになったらまた来てもいい? 俺、また同じホテルでバイトしたい」
「いいよ。冬季バイトもあるんじゃないかな。あとで調べてみなよ」
「うん」
「ウチ隙間風は吹くし、床暖房は無いし、窓は二重サッシになってないから、冬はめちゃくちゃ寒いぞー。覚悟しとけよ」
「上等上等」
俺は頷いて、渡兄ィの目をじっと見つめた。
「冬休みが終わったら、春休みも来る。来年の夏休みも来るよ」
そう言うと、渡兄ィは少し困ったように眉をハの字にして、
「それはいいけど……来年は受験だろ。学校の勉強も忘れるなよ?」
と言った。
その唇に、俺はちゅっと軽いキスを落とした。
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