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「おはよう、渓一」 「……おはよ」 「もうパン焼き始めてもいい?」 「うん」  結局何事もなく、いつも通りの朝を迎えた。  布団から抜け出して一階に降りると、渡兄ィはすでに身支度を整えて、慌ただしく朝食の準備をしていた。  何も変わらない日常の始まり。  キッチンの小窓から、朝日が差し込んでいる。その爽やかな光の中で食パンを切っている渡兄ィの姿を見ていると、胸の中に安堵の思いが広がっていくのを感じた。  渡兄ィは、やっぱりただの渡兄ィだ。  俺は一体、何を恐れていたんだろう。
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