第9節 旅人 桂場

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旅行先はオーストラリアのケアンズ。 日本とほぼ同じ時刻なのであまり時差ボケはない。日本は夜9時に出発し、10時間程で到着した為、現地に着いた頃には日が登り朝7時を回っていた。 日本で待ち合わせした時点では桂場の姿は見られなかった。変に質問すると疑われる可能性があったので、一旦黙って付いていくことにした。 結局ケアンズに着いてからも奴は現れず、ただただ観光を楽しんだ。 先ずは宿に向かい荷物を置く。空港からのバスはもう少し遅い時間にならないと出ないので、タクシーを利用した。とは言え日本のタクシーより割安だ。 宿に荷物を置いて、宿内で軽く昼食を食べる。12時を回った辺りで早速観光に宿を出た。 今日はグリーンアイランドに行きシュノーケル。離島の為にフェリーで島まで向かう。酔い止めを飲んでいなかった私は少し気持ち悪くなり、船内にて酔い止めの薬を買った。海外の薬は効き目が強いというのであまり飲用したくなかったが、やむを得ない。強さゆえに直ぐに効果はあった。 綺麗な海で有名なここは陸の上から海の底の魚がはっきりと見える。波も穏やかで、シュノーケルをしていると真横で魚達が戯れている。疲れきった心が洗われていく。 日本とは季節が真逆である為少しだけ寒かったが、そもそも常夏に近い場所なので気にする程ではなかった。 海を堪能した私は1人、着替えに向かった。今回の目的は桂場であった為、必要以上に集団との接触は避けるようにした。 グリーンアイランドから本島に戻ると既に夕暮れ時だった。 私達一行はその足でチャイナタウンに向かう。何処の国にも中国人は出没するんだな、なんて思いながら、私はチャイナタウンでワニの肉を食べた。鶏肉のような食感だが、それよりも少し固い。味付けは海外らしく大味で、正直私にはチキンライスくらいが丁度いい。 そしてその日、最後まで桂場は現れなかった。私はホテルに帰りぐっすりと寝た。
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