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「どうして? 俺には礼もさせてもらえねえの?」
耳元をくすぐるように甘く切ない声でそう撫でる。それだけで倫周は耐え切れないといったようにギュッと瞳をつむった。
「ん、ごめんね紫月……でも俺、紫月に余分な負担を掛けたくないんだ……俺は客なんだしお金払うのは当たり前だよ。でも紫月が俺に気を使ったりしたら……お店の為にもよくないし……俺、来づらくなっちゃうよ……」
「倫ちゃん……」
「ただでさえ俺、ナンバーワンの紫月をいつも独り占めにして指名して……こうして一緒にいてくれるだけだって信じられないくらいなのに……そんなおごってもらったりなんかして……もしもお店の人たちに迷惑な客だって思われたら嫌だ……。紫月のお荷物になりたくないんだ。だから……」
紫月は必死でそう訴える倫周の、言葉の最後までを聞くのも辛いといったように瞳をゆがめると、勢いよく彼を腕の中へと引き寄せた。
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