淫らな男

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淫らな男

「そんなに俺のこと考えてくれてんだ? 倫ちゃん」  驚く倫周の髪にちゅっちゅっとくちづけを繰り返し、そのまま首筋へと移動する。  まるで切なそうに囁く声が耳元を掠めれば、早くも倫周の吐息は嬌声へと変化を告げた。 「こんなにしてもらってんのに俺は何も返せねえなんてな……。それがすげえ辛え……」 「い、いいのっ……! 紫月に傍にいてもらえるだけで俺は……すごくうれしいんだから……っ……あ……」 「傍にいるだけなんて。こんなことしかしてやれねえなんて、マジで辛いぜ」  そう言いながら耳たぶを軽く噛み、首筋への愛撫を繰り返し、紫月は抱き寄せていた倫周の身体を後方から覆いかぶさるように抱き直すと、そのままソファの上へと押し倒していった。  甘い流れに乗るようにいつのまにか上着が脱がされ、中のシャツのボタンを探るように指が滑り込み――  そうして軽い接触を繰り返されるだけで倫周の吐息は乱れ、次第に荒くなっていく。 「紫っ……月ぃー……ああっ……はっ……ぁあっ……」  探り当てたボタンを器用に外し、既に(ほころ)びきっている胸元の突起をクリクリと弄れば荒い嬌声が止め処なく、まるで全身が欲望の塊のように腰まで動き出してしまう始末だ。  すべてが待ちきれないというように倫周は与えられる欲に没頭し、響く嬌声は個室のドアの外を通り掛ったホスト連中にも僅かに届く程だった。
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