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プロローグ
それは母の日の出来事だった。
大阪府吹田市にある阪急千里線南千里駅前にあるスクランブル交差点にて、日曜日の白昼、飲酒による暴走車が、歩行者側が青信号にもかかわらず、猛スピードで進入してきたのである。
その暴走車は交差点を横断中の歩行者七人をなぎ倒し、歩道に乗り上げる格好で、コンクリート造りの壁面にぶつかり停車した。
暴走車を運転していたのは一九歳の未成年男子で、同乗者はいなかった。
この事故で二人が死亡、五人が重軽傷を負った。
尚、運転していた未成年男子からアルコールが検出されたことが発覚、運転者の名前は伏せられたが、この事故は全国で話題騒然となった。
尚、事故に遭遇したのは、次の七名である。
重軽傷者…
飯山晴美(四五歳)主婦。
佐久間敦士(二五歳)会社員。
片桐陽介(二七歳)会社員。
藤井優奈(二〇歳)大学生。
三好達郎(六二歳)会社役員。
死亡者…
片桐郁恵(二五歳)会社員、陽介の妻。
香川幸樹(四七歳)自営業。
それから三ヶ月後、大阪府箕面市の山中にて、首を吊った二〇代半ばの男性の自殺体が発見された。
死後一〇日以上が経過していたが、免許証を所持していたことや、家族や恋人から捜索願が出されていたことから、身元確認は容易に行われた。
この自殺事件は、地元紙に小さく掲載されただけで、大きな話題にはならなかった。
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