宗矩さんが説く

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宗矩さんが説く

 宗矩は塚原卜伝の逸話を用いて、十兵衛に無の境地を説いた。  ある日、卜伝が刺客に襲われた際、咄嗟に小太刀を抜いて刺し殺した。  刹那の間に行われた一手は、神業にしか思われぬ。  側で見ていた者がなぜ小太刀で応戦したのかと問うと、  ーー刺客との距離が近く、刀を抜くのが間に合わないと思ったから。  と答えたという。 「寸秒の間にそこまで考え、更に小太刀の一突きで刺客を倒す…… できるか十兵衛」 「む、無理でありましょう」 「武術の真髄は一瞬で敵を倒す事にある」 「難しいですな……」 「我が父石舟斎の説く『無刀取り』、そして小野忠明殿の説く『夢想剣』、お主の目指すのはそこだ」 「……なるほど」  十兵衛、ニヤリとした。  言葉で現すのは難しいが、彼にはなんとなく理解できた。  己より格上の対手に挑む時、十兵衛は白紙の心となり、得意技一つで打ちこんだ。  また、スキーでの荒行の際には、周囲の景色がはっきりと見えたものだ。  それが無の境地であり、無刀取りであり、夢想剣だというのならーー 「精進いたします」 「うむ」  十兵衛の返答に父宗矩は満足げだ。  さて、マルコ・ポーロの事だ。  今週、彼はクレオパトラさんのお宅に訪問するため、エジプトへ向かった。 「いっつ、しょーた〜いむ☆」  助手のエルザもビキニ水着でついてきた。やはり全裸は問題であった。  またマルコ・ポーロの旅行番組は視聴率が上がったという。 「やっぱり女の子は必要かなあ」  マルコ・ポーロは苦笑した。 「だっだあーん! でやあー!」  迫力のダイナマイトボディーで、エルザは襲ってきたシベリア狼を撃退した。  大和撫子(ヤマトナデシコ)では対抗できぬ、ワイルドなセクシー加減であった。  それにしてもエジプトに向かったはずが、なぜにマルコ・ポーロらは雪原地帯にいるのだろうか。 「また間違えちゃったかなあ、てへぺろ」 「ぷるぷるぷる」  マルコ・ポーロの隣でエルザはダイナマイトボディーを揺らして視聴者サービスだ。あざとい。  ーーブジャアー!  マルコ・ポーロの用心棒オオカワウソは、白熊に向かって威嚇の咆哮を浴びせた。  筋トレを繰り返すうちに人間の言葉を理解し、知性まで身につけたオオカワウソは、マルコ・ポーロからアバンと命名された。  ーーブジャアー!  オオカワウソの必殺技「アバン・スラッシュ」が白熊を×字に切り裂いた。ウェ〇ンX並みの戦闘能力だ。  今週の地獄プロレスはお休みでした。。。
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