3反 大地を起こす者たち

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3反 大地を起こす者たち

「今日はとりあえず、各自が使う実験用の畑を(たがや)す作業を行う」  吹っ飛ばされはしたものの、特に大きな怪我もなく気絶もしなかったので、そのまま他のクラスメイトと一緒に実習とやらのために外へ連れ出された。  目の前には、少々荒れた畑と思われる土地があり、小さく区切られた区画が人数分広がっていた。一応雑草は取り除いてあるようだけど、ところどころ低木の切り口が残っている……たぶん数年放置された畑だろうな。 「まったく、なんで私がこんな泥遊びしなきゃいけないのよ……私は魔法を学びに来たのよ!」  さっきよりは落ち着いているものの、相変わらず近付いただけで切り殺されそうな怒気を(まと)っているフルートさんだ。 「何でも何も、ここは魔法を利用して農業の生産効率を上げるという研究をする学科だぞ? 農作業しないで何をするんだ?」 「そんなこと知らないわよ! 何よ、ちょっと適正検査で失敗したからって、こんな底辺の学科に入れられるだなんて……」  底辺学科だったのか。まあ、そもそも農業と魔法ってなんか結びつかないしな~…… 「底辺なのは否定しない。何せ設立されたのが今年からだからな。実績はゼロだ」  え、そうだったの! 歴史ある学校だからこの学科もてっきり── 「実績とか、どうでもいいのよ! 農業とか、下民のやる汚い仕事なんかやりたくないって言ってんの!」 「……はぁ、お前仮にも貴族だろ? 自分のところの領民にも同じこと言えるのか? いや、答えなくていい。どうせ気にも留めず言うんだろうな。ったく、これだからお高くとまった上級貴族は使えない……」  苦虫を噛み潰したような顔をしながら先生がぶつぶつ言っている。 「あ、あんた、私のことバカにしているのかしら!? 少なくともそこの汚らしい下民よりは国のため、一族のためになるわよ!」  ビシッという音が聞こえそうなほど勢いよく、僕を指さしたフルートさんだ。 「……ほう? 国のために? つまり、この国家のために研究を続ける王立学院の、ここ農業科の研究においてもアグリより役に立つと?」 「当たり前じゃない! そんな、スズメの涙ほども魔力が無い下民が何の役に立つってのよ!」  先生の口元に嫌な笑みが浮かんできた。しかも、いつの間にか僕まで話に巻き込まれていないか? 「よしわかった。今からフルートとアグリの二人で勝負してもらおう! 今日の実習課題は、この畑を耕して使える状態にすること。先にそれを達成した者を勝者とし、このクラスでは上位の立ち位置とする!」 「はぁ!?」  思わずそう声をあげていた。じっと巻き込まれないように息を殺していたのに、気付けば大変なことになっていた。 「上等よ! 私が勝ったら、さっさとこいつを退学にさせてやるわ!」 「ああ、構わないぞ。俺が許可しよう」  勝手に許可された! え、僕の意見は? 通学初日で退学なの?  ここに至るまでに費やしたお金……僕じゃあ一生かけてもおじさんに返せなさそうな額なのに……
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