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「ルールは簡単、各自目の前にある土地を耕してみせること。一応、農具はここに用意してある物を使うこと」
先生の後ろにいつの間にか農具が並んでいた。鍬や鋤、草削り、シャベル、その他よくわからない物まである。
「また、魔法の使用も許可する。相手の邪魔をしない限りは制限無し、土魔法でも肉体強化でも何でも有りだ」
魔法……土魔法ってなんだろう……え、もしかしてめっちゃ不利なのでは?
「いいわ。さっさと始めましょう? 一瞬で終わらせるわ!」
フルートは自信満々だし、これで僕の学生生活終了かな?
何はともあれ退学になんかなりたくないし、自分の全力でぶつかるしかない!
内臓っていくらで売れるんだろうかという後ろ向きな思考を振り切って、無理矢理やる気をおこした。
とにかくこの小さな土地を耕せばいいんだ。
なんだっけ、10メートル掛ける10メートルだとか、1アールだとかよくわからないことを言われた気がするけど……きっと広さのことだな!
他のみんなは納得しているみたいだし、たぶん学校で習うことなんだろうけど……お貴族様め、羨ましい!
まずは雑草や雑木の跡を確認する。草はそれなりに根を張っていたようだけど、木の根はそこまで広がっていないようだ。
土も少し固いだけで、刃が立たない程ではない。
うん、これなら鍬だけで大丈夫そうだな。
用意された道具の中には鍬だけでも何種類かあったので、その内の少し重めでしっかりした物を選ぶ。これなら木の根にも負けないだろう……
用意されていた道具は全て新品だった……土汚れ一つ無い農具なんて初めて見た。
少し圧倒されながら鍬を持ち、いざ耕すぞと気合を入れ直した時、
「──彼の者を貫け アースグレイヴ!」
その掛け声と共に、大きな地響きが轟いた。
横を見ると、フルートの区画の地面から槍のように尖った土の塊がいくつも突き出てきた。
さっきまでの平坦な地面からすっかり様変わりした、まるでヤマアラシの背中のようになった畑を目の前に、勝ち誇った顔を浮かべたフルートが立っていた。
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