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「どうかしら? ま、この私にかかればざっとこんなものよ!」
「はい、やり直し」
「なんでよ!?」
即座に否定されていた。むしろなんでいけると思ったのだろうか……
先生が面倒そうに解説を始めた。
「いや、お前なあ、むしろなんでこれでいけると思ったんだ?」
どうやら同じ感想だったらしい。
「なんでって……え、耕すって地面を掘り返せばいいんでしょ?」
「はぁ~……やっぱりほとんど授業聞いてなかったんだな……じゃあ……クロップ、耕すこと、つまり『耕耘』の意義、効果は?」
クロップと呼ばれた少年が嫌そうな表情を浮かべながら、しぶしぶといった感じに説明を始めた。
「ええと、たしか……鍬等を使い畑の土を起こす、つまり固くなった土を砕くことで状態を柔らかし、植えた植物の根の成長を促進する。更に雑草の芽や種を地中に埋めることで、作物の生育に適した状態の土にすること、です」
なるほどな~。必要なことだからと言われてなんとなくやっていたけど、そういう意味があったのか~……
ちなみにこのクラスには、僕やフルートを含めて五人の生徒がいる。クロップもその内の一人だ。
「さて、フルート、一体どこが問題か理解したか?」
「知らないわよ! ふんっ!」
先生は頭痛でもするのか、額に手をあてながらため息をついた。
「いいか? 耕すことの一番の目的は、生育に適した土壌にすることだ。お前の畑をよく見ろ」
フルートの畑には、固く鋭く尖った土の塊がたくさん生えているだけで、畑らしい平坦で柔らかな土はどこにもなかった。
「この硬い槍のような土にどうやって植物を植えるんだ? ええ?」
「うぐぅ……」
明らかに怒気を含んだ声と目で迫る先生に、さすがにフルートも気圧されていた。
「いいか? 耕すってことは、種や苗を植えて作物が定着しやすい地面を作るってことだからな? 種どころか刃物を差し込むことすら難儀する、ガチガチの土の塊を生み出すこととは真逆の行為だからな?
わかったか? わかったなら、ちゃんと種を植えられて、植物が根を張れるような状態にしろ! はい、やり直し!」
先生がパンと手を打つと、一瞬地面が光ったかと思えばとげとげしい大地は消え去り、元の平地に戻っていた。
「うそ……無詠唱で? いつの間に魔法陣を?」
魔法って便利なんだな~と感心しながら見ていたけど、他の生徒がなにやらどよめいている。どうやら簡単にできる魔法じゃないみたいだ。
魔法の偉大さと可能性を目の当たりにして驚いたものの、結局今の自分にできることは何も変わらないと作業に戻った。
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