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4反 氷雨降りて大地固まる
農業、それは太古から続く人間の営み。
狩猟や採取という運に任せた生き方から脱却し、一つの土地に住み続けることを実現させた人類最大の発明とも言える革新的技術である。
魔法、数多の生物に内在する不可視のエネルギーを用いて超常現象を人為的に引き起こす、これまた人類史上他に類を見ないほどの画期的発明である……たぶん。
気の遠くなるほど昔から連綿と続くその二つの技術は、しかし、今の今まで決して交わることはなかった。
だが、そんな空白の歴史も間もなく終わるだろう!
この、稀代の大発明家にして大魔術師、更に大農家になるアグリが、その時代を、過去のものに──
やっぱり農家や農業って言葉が入ると、うまく締まらないな……
とにかく! このアグリ様が、新たな時代を切り開くんだ! よしっ!
いつもの気合入れを終えて、教室のドアを開ける。
昨日は手続きやらなんやらで遅刻気味になっていたのがいけなかった。誰よりも先に教室に居れば、あんな目には合わないはずだ。
昨日一日でたくさんできた生傷の痛みを噛みしめながら顔を上げる。
そこには、怒りのあまり頭の血管が切れるのではないかと思わず心配したくなるような顔をしたフルートさんがいた。
いつの間に発動させたのか、彼女の周りに氷の矢がいくつも浮いている。
「この、この!」
今日はまず氷の魔法がくるのかと、諦め半分警戒半分の気持ちで構えた。
「……っ!」
しかし、フルートは声にならない唸り声を漏らしただけで、結局氷の矢が飛んでくることは無かった。
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