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5反 憂鬱な果実
『食』
それは人のみでなく生き物が生きていくうえで欠かせない物。
どんなに強い動物も、食べなければいずれ動けなくなる。
食を制するものは世界を制するといっても過言ではない。
獣のように鋭い爪も、大樹のように巨大な身体も持たない人間が、ここまで世界中に住まうのは、ひとえに食を制したからと言えるだろう。
人が選んだ食を制するための武器、それが農業!
農業こそが食の根幹だ。
ここ、王立魔術学院の農学部において、僕を含め優秀な生徒たちが日夜農業革命を起こそうと研究を進めている。そう、僕を含めて!
今僕は人が更なる高みへ到達するために革命を実現し、食の覇王となるのだ! ふはははは!
……なにか根本的に間違えてる気がしてきた。
本当は覇王にも魔王にもなりたいなんて考えてないけど、とりあえずいつものように力強く教室の扉を開ける。
そこには今にも爆発しそうな火の玉が浮かんでいた。
「うわあ!!」
「え、何!? 何かあったの!? ……あ」
火の玉が一瞬揺らいだかと思えば、そのあとすぐに大きく膨らみ、物凄い爆発音と共に破裂した。
「……げふ」
幸い火の手は上がらなかったものの、巻き起こった衝撃波でそのまま廊下の壁に打ち付けられた。
こんな朝にも慣れてきたものの、やっぱり痛いものは痛い……
「なんだ、アグリじゃない。ちょっと驚かさないでよね! まったくもう……」
魔法を暴発させた少女は、そんなぼやきを吐きながら教室へ戻っていった。
どうやら今日も、僕が悪かったということで彼女の中で決着がついたらしい。
こうして、覇王からは程遠い僕の学生生活は、今日も平和に始まったのだった。解せない……
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