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「この際だから言うけど、私は魔法の調整や安定化が苦手なのよ」
ほんのちょっぴりだけどと念を押されたが、どうやら毎回好きで僕を吹っ飛ばしていた訳じゃないらしい。
「あんたも他の人の魔法を見てるんだからわかるでしょ?」
たしかに、ここに来てから一ヶ月経つが、他の生徒とフルートでは魔法の扱い方が大きく違っていた。
「なんかいつも派手だよね?」
「派手で悪かったわね!」
怒られた。理不尽だ。
色々あった登校初日以降、畑の肥料やりや畝立て、種播き等の授業が行われた。
その授業の中で、フルートや他のクラスメイトが何度も魔法を使っているところを見た。
風で肥料を撒こうとしたり(ムラが激しいのでやり直し)、土魔法で土を寄せて畝を立てようとしたり(耕耘と同じく土が固くなりすぎたのでやり直し)、みんなまずは魔法で作業を進めようと試みていた。
そういえば、畝を立てるってどういう効果があるんだろうか? 土を足首の上くらいの高さまで細長く盛ると何が変わるのだろうか……
「たしか、畝を立てると水はけが良くなるとか言ってたわね」
内心で思っていた疑問に唐突に答えが返ってきたので、驚きつつフルートの顔を見る。
「あんた、顔に考えが出すぎよ。貴族ならもっと悟られないように……って、あんたは貴族じゃなかったわね」
「そうだけど……あれ? 授業はあまり聞いていないんじゃなかったっけ?」
最初の授業の時も、それが理由でハリネズミみたいな畑を作っていたし。
そんな心の声も見透かされたのか、少しムッとしながらフルートは答えた。
「あれからちゃんと復習したのよ。まさか農作業がこんなに、よくわからない作業ばかりだと思わなかったし……」
フルートさん、実は結構真面目なのかもしれない……
今度は心を読まれないように無表情でいようとしたが、ギリッと音がしそうなほどの鋭さで睨まれた。バレてるらしい。
これ以上墓穴は掘るまいと授業の振り返りに戻る。
魔法での農作業は全員失敗しているものの、フルートの失敗は他のみんなと比べると明らかに派手だった。
風魔法で肥料を撒こうとすれば他の生徒の畑やその向こうまで吹き飛ばし、土魔法で畝を立てようとすれば前みたいにトゲだらけの畑にしていた。ついでに飛んできた肥料や種イモが僕の顔面に直撃した。
魔法で熾す風も土も、明らかに過剰だった。
「なんでなのかしらね……昔から、こうなのよ。私だけ、家族の中でも私だけ……」
それは、いつもの強気な彼女とは違う、退学にされるかもしれないと言われた時と同じ、今にも心が折れてしまいそうな呟きだった。
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