6反 文明の萌芽

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「さて、アグリの手も元に戻ったことだし、授業を再開するぞ」  まるで僕が授業を止めていたような雰囲気に思える……  フルートに凍らされた手もなんとか無事に溶けて、今回の被害はちょっとだけ霜焼(しもや)けしただけに収まっていた。  何度でも言うけど僕は悪くないからな! 実際には言葉にできないけど! 「んじゃあ、まずはフルートから発表してもらうか。書いてきたレポートを出してくれ」 「いきなりレポートなんて言われてもよくわからないのよね……こんなんで良かったのかしら?」  フルートはそう言いながら、細かい文字がたくさん書かれた羊皮紙を取り出し先生に渡した。  先生はそれにざっと目を通し、軽くうなずいてから教卓に置いた。 「初めてにしては十分だろう」  次に先生は教卓の上に四角い箱のような魔道具を置いた。  魔道具、魔石や特殊な素材を使って作られ、魔力を流し込むことで作動する特殊な道具である。試験の時に使った杯も、水を生み出す魔道具なんだそうな。  この学院でも日々新たな魔道具が開発されている。  農業科もある生産学部は、主に魔道具の研究・開発に関する学科が集められている。……というか、農業科以外は何かしらの魔道具に関係する学科だった。  先生が取り出した魔道具は、今までの授業にも度々使われている『投影機』と呼ばれる物だ。  投影機の真ん中あたりに切れ込みが入っており、そこから上下に開くことができる。  フルートの書いたレポートをその切れ込みに挟むようにして設置する。  そして先生が魔力を流し入れると、魔道具全体に光が走り、複雑な模様が浮かび上がった。更に、投影機の横に小さく開いている穴から壁に向かって淡い光が放たれた。  すると壁一面にフルートのレポートが映し出されていた。  魔道具、本当に便利だな~……僕みたいに魔力が無いとほとんどない人間にはほとんど使えないけど。 「じゃあ、読み上げてくれ」  そう言われてフルートが立ち上がる。 「ええと、まず最初の実習では耕耘(こううん)作業を行いました」  フルートのレポートはとてもわかりやすかった。どんな作業を行って、そこでどんな問題が起きたのかが簡潔にまとまっていた。  普段の授業では先生の用意した資料を映して授業を進めているが、先生の資料はなんというか……情報が足りない。数を順番に数えるはずが、一の次に十を数えているような、途中の情報が丸々抜けていることが多いのだ。  それに対してフルートのレポートは、僕には読めないものの、言いたいことが過不足なくはっきり纏まっているように感じた。  ……まあ、服が汚れることや日焼けしないための魔法が大切だとか、僕にはいまいち必要性がわからないこともあったけど。
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