7反 自ら種を播く前に

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7反 自ら種を播く前に

 フルートの説明を聞きながら実習内容を思い返す。  初日はあの一番大変だった耕耘(こううん)作業だ。ここは思い出したくもないくらいキツかった……作業が、ではなくて、登校初日なのに色々なことがありすぎたからだ。  そこから何日か使って各自いくつかの区画を畑として使えるように耕した。  いや、結局半分以上僕が耕すことになってた気がするけどね。  何はともあれ、1(アール)ずつの畑がいくつも準備された。  その次は施肥(せひ)、つまり肥料を撒く作業をやった。  先生が(あらかじ)め用意しておいた特製の肥料らしい。それを各畑に均等に()くだけだ。  バケツに肥料を入れて畑に適当に手で掴んで振り撒いていったが、今回は僕にも先生から注意が入った。 「アグリ、それだとムラが多すぎる。実験としてやる場合はできるだけ均等に近付けてくれ。その方が結果の要因が推測しやすいからな」  それならと、四角く区切られた畑をまっすぐ歩きながら右へ左へ交互に肥料を撒いた。  以前にも少しやったことがあったが、こんなに慎重に撒いたことはないので、しばらく動きがぎくしゃくしていた。    足元が悪く目印の少ない畑は、ただ真っすぐ歩くということが以外に難しい。  この作業が、勝負事に発展した最初の課題じゃなくて良かったと安堵していると、突然背中に無数の石を投げつけられたような衝撃が走った。 「いって~!」  振り向いて確認すると、フルートが魔法を使った後っぽい恰好をしている。そして、僕の足元にはさっきまで無かったはずの、ちょっと固い土の塊や肥料が散乱している。  ……たぶん、フルートの魔法で飛んできたんだろうな。  他のみんなは、耕す前より柔らかくなった土に足を取られ苦戦して、何人かこけたりしつつも結局僕と同じように、バケツに入れた肥料を手で撒いている。 「まったく、なんでこの肥料ってのはこんな変な臭いがするのよ! これじゃあ、育てた野菜も変な臭いが付くんじゃないの?」  堂々と文句を言っているのは案の定フルートだ。そんなに匂うかな? 肥料としては臭いがしない方だと思うんだけど……  あ、そういえば今日の実習の前に、先生から肥料の作り方は教えないようにって言われてたな。ということは、みんな肥料がどうやってできているのか知らないとか?  ……よし、黙っておこう!
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