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そういったことが他の生徒にもあり、一日で終わらなかった。
今回もフルートを始め、みんな魔法を試したものの、やはり土を柔らかさを保ったまま形を整えるのは難しいらしく、結局僕と同じように手作業で進めていた。
フルートの場合は一度、またあのハリネズミの背中みたいな畑になっていたけど……
「うう、こんなの、手作業でやることじゃないっすよ……」
半泣きになりながら呟いているのはたしか、プラウという名前の女子だ。
他の生徒は服や体が汚れるのを嫌がるが、彼女だけはあまり気にしていない。そこだけでも少し親近感が湧いた。
「そうは言うが、実際にこの方法で栽培しているのが平民の中でも下層に位置する農民だからな。少しは見直したか?」
その言葉にみんな口を閉ざす。
たぶん貴族のプライドみたいなものがあるのだろう。心では認めたくないけど、実際に作業してみて否定するのも難しいというところだろうか。
先生は一つ溜息をついて、明日の授業について伝える。
「今日で畝立て作業が終わらなかったので、明日も同じ授業内容だ。んじゃ、解散」
そう言ってさっさと先生は帰ってしまった。
さて、僕も帰ろうかとしたところ、服の裾を引っ張られた。結構強い力で、フルートに。
「アグリ、ちょっといいかしら?」
ダメだと言って帰りたいが、そんなこと言ったら殺すと言わんばかりの眼で見られている。
「な、なに、かな?」
「……」
素直に従って返事したのに、なかなか続きを話さない。ついでに服の裾も離してくれない。
フルートは何回か深呼吸した後、意を決したように口を開く。
「私たちに畝立てのやり方を教えてちょうだい」
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