第七話:死神教授と地獄のリハビリ

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 「げぇっ!お、お前は…」リアルに声が出た。こざっぱりした白のトレーナーシャツ、その下に、隠そうとしても隠し切れずに浮き出ている筋肉の塊。五分刈り頭に、ゴツゴツとした岩のような無骨な顔立ち。そして甲高い声。  間違いない、こいつこそは村松藤兵衛。表向きは、どこにでもありそうな喫茶店の経営者だが、実は警視庁科学特捜部の元キャップにして結城志郎=覆面ホッパーの協力者。あからさまに露骨な本邦政府のエージェントである。  「な、何故お前がここに?」  吾輩の狼狽をよそに、藤兵衛はおもむろに尻ポケットを探ると、一枚の葉書を吾輩の眼前に突きつけた。吾輩が正月に結城志郎に宛てて送った年賀状である。ちなみに、「今年こそは裏切り者のお前を殺す。」と書いてある。当たり前だが本物だ。  「ご丁寧に連絡先を書いておきながら、その挨拶は一体何だ。」ぶっきらぼうな口調で差出人のところを指で突きながら藤兵衛は言う。「あまりに不審だからと放っておいたら、今朝チョーカーから直接電話があって、この場所に招待を受けた。」  「聞けば、お前のリハビリに協力して欲しいと言うじゃないか。上等だ、この村松藤兵衛、ご招待を受けて断ったとあれば沽券に関わる。だからこうして出向いてやったと言う次第だ。さあ、来たからには徹底的にやる。貴様らの捻じ曲がった根性を叩き直してやるぞ、覚悟しろ、死神教授。」  やはり総統閣下のご立腹は解けていなかったのだ。
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