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一週間が瞬く間に過ぎた。
村松の野郎、意気揚々として立ち去って行きやがった。犠牲者は吾輩だけではない。トレーニングルームは死屍累々の惨状である。戦闘員と言わず怪人と言わず、皆床に突っ伏して肩で息をしている。あっちの壁にもたれかかり、虚ろな目で天井を見上げている金髪の優男は、たまたま視察に来て惨事に巻き込まれた悪魔博士だ。
もう、奴一人でチョーカー壊滅出来るんじゃないか?
「はっはっは。わずか一週間で現役復帰か。私の目に狂いは無かった様だな、死神教授。」
「はっ!」
「どうした?不服そうではないか。」
「いえ、そのような事は…」流石に総統閣下である。声だけで、吾輩の心情を正確に見抜くとは。しかし…「一つお尋ねしても宜しいですか?」
「よかろう。何なりと申してみよ。」
お言葉を受け、吾輩はトレーニングデータを提示しつつ、包み隠さず懸念を述べた。
「この通り、今やチョーカーの戦闘員はもとより、各種怪人の基礎身体データの殆どが村松藤兵衛に筒抜けとなっております。藤兵衛を介して政府はもとより、覆面ホッパーに、こちらの弱点を握られたと言うのは、その…如何なものかと。」
「一理あるな。」総統閣下はあっさりと認めた。その上で…「であれば、それらの弱点を塞ぎ、さらなる戦闘力の強化に当たる。それがお前の仕事ではないかな?どうかね、死神教授?」
ですよね。ええ、薄々気付いてました。
「忙しくなりそうだな。宜しく頼むぞ、死神教授。」そう言うと通信は切れた。
『全てを我が物に。我が物は全て総統閣下の物に。ヘル、チョーカー!』(ため息)。
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