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既に日はとうに暮れている。病院から遠く離れた場所まで来た頃、漸くパトカーのサイレンが聞こえて来た。吾輩は満足し、戦闘員と別れて一人、人気のない川沿いの道を歩き始めた。
ふと、目の前に小さなシルエットが佇んでいるのに吾輩は気付いた。「今日は随分と、独断専行してくれたな。」子供らしい声が言う。表情は読めないが、言葉の刺々しさとは裏腹に、そこに怒りの感情は含まれていない様だ。「は、出過ぎた真似を致しました。罰は如何様にでもお受けいたします。総統閣下。」
「まあ、良い。我と似ていたのであろう?」
「全てお見通しでしたか。」別に驚きは無かったが、流石の情報収集力だと、吾輩は心の中で舌を巻いた。だが、それに対する総統の返答は謎めいたものであった。
「偶然ではない、のかも知れないぞ。」少し楽しげな口調でそう言うと、一転して氷のような冷たい声で続ける。「さて、お前に対する罰を言い渡す。」
やはり許しては貰えなかったか。覚悟を決めた吾輩は背筋を伸ばした。
「明日は一日、私と付き合え。場所は例の遊園地だ。たっぷり楽しませてもらうぞ。」
「はっ!畏まりました。」吾輩は答え、改めて総統閣下に忠節を尽くそうと心に誓うのであった。
『全てを我が物に。我が物は全て総統閣下の物に。ヘル、チョーカー!』
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