第七話:死神教授と地獄のリハビリ

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第七話:死神教授と地獄のリハビリ

 ぶわはははは!吾輩があの程度でくたばるとでも思ったか?諸君、今日も良い天気だな。そう、吾輩は死神教授である。足はあるぞ。  いや、実際問題、吾輩の以前の身体は、あの爆発で木っ端微塵に吹き飛んだのは事実だから、二度目の死を迎えたと言っても、あながち間違いではない。だが諸君。吾輩が、何の勝算も無しに、あの様な行動に出るとでも思うかね?  前にも言った筈だ。吾輩の脳はチョーカーのネットワークに直結していると。当然、そこには吾輩の意識もバックアップしてある。後は、予め用意しておいた義体に、それをインストールすれば、これこの通り、華麗な復活を遂げると言う訳だ。  無論、裏切り者の結城志郎を道連れに自爆した、あの瞬間までの記憶を、こうして引き継げているのは、現場に飛び散った吾輩の電子頭脳の破片を丁寧に拾い集めてくれた戦闘員達のお陰であり、彼らには感謝している。ああ、ついでに言うと、残念だが結城志郎の頭部を回収することは叶わなかったそうだ。  と言うことは、吾輩がこうして復活を遂げたのと同じ様に、いずれは志郎、いや、覆面ホッパーも、再び我々の前に立ちはだかる時が来ると言う事を覚悟せねばならない。だが、それは少なくとも数カ月、うまくすれば数年は先の話。それだけの時間を仮に稼げたとするならば、吾輩の身体など安いものではないか。  だが、それにしても覆面ホッパーは強敵であった。強敵ではあったが、戦いの駆け引きにおいては、吾輩の方が一枚上手だったと言う事であろう。  ああ、そうそう。改めて諸君に一つ報告がある。喜んでくれ。吾輩は今回の件で、有り難くも、また思いがけずも総統閣下より、直々にねぎらいのお言葉を賜ったのだ。この事を悪魔博士が知ったら何と思うか、正直楽しみでならぬ。  もとより、今回の結城志郎に関する件は吾輩の監督不行届に端を発している。それゆえ、体を張って解決に尽力したからと言って、それで総統閣下のご不快が解けるとも思わなかったのだが、やはり総統閣下は人心掌握の術を心得ておられる。  ともあれ、義体に記憶は移せたが、身体能力までもがコピーできた訳ではない。と言う訳で、今吾輩はまだ入院中である。身体が思うように動かないと何が辛いと言って、メスを握れないと言うのが最も堪える。早くリハビリを開始せねばと思うのだが、これに関しても総統閣下がご配慮を示して下さった。何でも、選りすぐりのリハビリ専門家を呼んで下さるとの事だ。  が、率直に言ってこの判断には些か首を傾げざるを得ない。我がチョーカーには数多のリハビリ整形医が居る。吾輩の専門外ではあるが、その中の何人かは年次医学総会でも親しく挨拶を交わす間柄だ。それらを差し置いての専門家とは、一体いかなる人材であろうか。  まあ、いい。総統閣下がここまでのご厚意を示して下さっているのだ。有り難くお受けするのが筋、と言うものであろう…。
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