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「ハウドユドゥー、ルテナン。トゥデイ、ナイストゥミーチュー」
アケミが英語で話しかけた。
中尉は驚きながら、笑顔で握手を求めてくれた。が、大きな手との握手は一瞬だけ、すぐ親指を立ててトラックの荷台を指した。
日本人なら、何を指すにも人差し指を使う。親指と人差し指を使い別けるのは、アメリカの文化らしい。
キムの息子、ジョンウが荷物を積み込み、自分も上がった。手を伸ばし、女たちを引っ張り上げる。キムは助手席へ乗る。
アケミは最後に荷台へ乗った。ガチャリ、荷台の下側扉が閉じられ、幌が下ろされた。外の目から女たちを隠す。
「オーライ、ゴー」
中尉の号令でトラックが走り出した。
アケミは幌の隙間から手を振った。応えて、中尉と軍曹が手を振っていた。
トラックは基地の正門前を通過した。正門と対面して英語の看板を掲げた店が並んでいる。基地村と呼ばれる場所だ。
この基地村でも、多くの女たちが兵隊を相手に商売をしている。アケミたちは余所者、ここでは商売できない。なので、基地から離れた前線に近いキャンプへ赴く。
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