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キャンプ・2日目
夜に雨が降ったらしい。
朝、キャンプの地面は濡れていた。
アケミはテントの窓から空を見た。薄曇り、白い雲が低いところにある。原爆の心配は要らないだろう。
スピーカーが軍の宣伝放送を流している。雑音が混じり、音が歪んでいるのは相変わらずだ。
女はテントから出られない。簡易トイレもテントの隅にある。ジョンウがトイレの始末で出入りする、甲斐甲斐しい姿が微笑ましい。
キムが鍋を持って来た。アメリカ軍の朝食だ。
皿に盛られたシチューの味は濃厚、具の野菜や肉は大きくゴツゴツしている。パンが固い、噛みちぎるのに一苦労だ。
「今日は8時から始める。予約の札は81番まで出た。夜までかかるかなあ」
「じゃ、あたしもだね」
キムの予告に、アケミは応えた。
女7人で平均11人以上の仕事になる。1人こなすのに何分かかるか、考えただけで腰が重い。今日は重労働になる、と覚悟を決めた。
アケミは自分の仕切りにもどり、ベッドを整えた。汗を吸った毛布を入れ替え、枕カバーも交換する。タバコの煙をテントの生地に吹き付け、昨日からの臭いを消した。
ジョンウが新しい水の入ったバケツを持って来た。乾いたタオルをたたんで、枕元に置く。
耳をそばだてると、テントの外に男たちの声が集まったいた。もう行列ができたよう。
「グッモーニン、ジェントルメーン」
キムの声が響いた。
第5種補給品の配給が始まる。
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