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キャンプ・1日目
がたごと、トラックは穴ぼこだらけの道を行く。
「おっとと」
ジョンウが足を滑らせた。ぽて、アケミに寄りかかった。
「すい・・・ません」
男の子が消え入りそうな声で謝る。アケミは笑みを返した。
ジョンウは16才、まだ顔に幼さが残る年頃。体は細くて、横幅の広いキム・デジョンと比べると、親子とは信じられないほど違う。
「もうすぐ着くぞ、準備しろ」
荷台をのぞく窓を開け、キムが大声で報せた。声を張り上げないと、運転席から声は通じないほど、エンジン音はひどい。この騒音に慣れる事ができれば、運転手が務まる時代だ。
アケミは腰を上げた。座っていた木箱のフタを開けて、指差した。
「また、これに入るの?」
女たちが不満をもらす。
「アメリカ人って連中は、女をケーキの中やプレゼントの箱に隠すのが好きなのよ」
アケミはジョンウに指図して、残る箱を開けさせた。
ぶうぶう、ほおを膨らませながら、女たちは箱に入る。木箱は一人が入る大きさ、底にクッションが敷いてある。タオルやシーツの商売道具も入っていた。
フタを閉じ、外側のラベルを読む。
第5種補給品、U.N.、SOUTH-KOREA・・・の文字を確認した。
最後、7つ目の木箱にアケミが入る。ジョンウがフタを閉じた。
あたしらは補給品、人ではなく物なのだ。自分に立場を再確認して、アケミは息をついた。
これから行く所は国連軍所属、アメリカ軍のキャンプ。国連加盟国は国別にキャンプを作っている。
アメリカ軍はキャンプに娼婦を入れてない、それがアメリカの建前だ。韓国軍は女衒の手引きはしていない、こちらは韓国のメンツ。
ニュールンベルグ裁判や東京裁判で、国連軍はドイツ軍や日本軍が犯した人道上の罪や人権無視を裁いた。でも、第5種補給品は人ではなく物なのだ。何が起ころうと、人道上の問題にも人権蹂躙にもならない・・・とか言う理屈らしい。
日本軍は慰安婦として人間あつかいしてくれた、戦争には負けたけど・・・アケミは昔を懐かしく思った。
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