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それから月2~3回のペースで呉宮執事を利用し、主に仕事の愚痴を聞いてもらいながらウインドウショッピング等のストレス発散に付き合ってもらっている。
不思議と婚約破棄をされた悲しみは薄まり、呉宮さんのことを知りたいと思うようになった。
「田中さん、この見積りなんだけど」
「あ、やっぱりダメですよね。修正します」
「いや。ここまでは良く出来てると思う」
「え?」
「俺も少し手直ししてみたから、ここは田中さんが修正してみて」
「ありがとうございます」
「どういたしまして」
去り際、褒めるように私の頭に優しく手を乗せる呉宮さんは上司としても格好良い。
仕事の愚痴を聞いているからか、私の苦手なお客様からの案件の見積りをさりげなくフォローしてくれたり業務が円滑にいくよう配慮してくれているのが分かる。
そういう小さな気配りが私の気持ちを揺さぶっていく。
会社ではそこまで親しく出来ないため頼りはレンタル執事なのだけれど、お財布も薄くなり徐々に利用回数も減っていった。
そして、上司と部下の関係のまま半年が経過。
何故か呉宮さんは社内で隠れて私に接触してくることが増えたのである。
それも必ずキスの支払いを強制して。
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