呉宮さんはキス魔です

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「何するんですか?」 「それはこっちのセリフだ」 「はい?」 「止めろよ」 「は?」 失礼と承知の上で汚い一文字を吐いた。 止めるも何も私は呉宮さんの部下であって行動を制限するような関係ではない。 百歩譲って金銭で成り立つお嬢様と執事の関係であってもそれを止める資格は私にはないはずだから。 「彩星」 「っ……」 顎に添えられた手。 そのまま力任せに視線を合わされて固まってしまった。 「彩星限定でキス魔になるって言ったろ?」 「だ、だったら何でさっき」 「へぇ、嫉妬?」 穴があったら入りたい。 彼女でもないのに呉宮さんが私以外の人とキスをしようとすることに不快感を覚えてしまっている。 「こ、ここは会社です」 「我儘なお嬢様ですね」 「っ……」 「お嬢様が御依頼して下さらないから、こうしてお迎えにあがっているというのに」 これはマズイ。 呉宮さんが執事モードに入ったということは金銭を要求されるルートに入ったということ。 それは、つまり。 「お支払いはどうされますか?」 「頼んでないのにずるいです」 「でも、喜んでいるのでしょう?」 「何なんですかもう」 「彩星とキスがしたいだけだよ」 チャライ。チャラすぎる。 第一付き合ってもいないのにキスをし続けている私も私だ。 ここはもうきっちり断りを入れるしかない。
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