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「んっ……」
私は触れるだけのキスをしたはずだった。
したはずだったのに、呉宮さんが強引に唇を奪うせいで息継ぎのタイミングが分からなくなる。
胸板を押し返しも、その手は呉宮さんに拘束されるだけで何も意味を成さない。
「こういう可愛いことされると我慢出来なくなるんだけど。やめてくんないかな」
離した唇で迷惑そうに言いながら私を優しく抱きしめるのだから何が本当なのか分からない。
「ごめんなさい……」
「謝るならボーナス入るまでに結論出せるよな?」
「え?」
「最後の依頼で俺に気持ちを聞かせてほしい」
「私は……」
「今じゃなくていいから。もう少しだけ、このままでいさせてくれ」
煮え切らない私のせいで苦しませている。
希望する答えは1つしかないのに、それを言う勇気がまだ出せない。
こんな私に価値はない。
抱きしめてくれる呉宮さんの背中に腕を回してみたものの、その手は握り拳を作ることしか出来なかった。
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