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「じゃあ背中を見るね」
診療所のベッドでうつ伏せになったマシューと目を合わせる。そもそも僕がこの診療所に来た目的はマシューの付き添いなんかじゃない。マシューに医療処置を施した人物と周囲の詮索が本来の目的だ。
子供二人の真意に気づかぬまま、ドクターケインは戸棚から塗り薬を取り出した。キッと蓋が音をたてて開く。彼は塗り薬を指で絡め取る。容器の入った方をマシューのベッドに置いた瞬間、僕は荷物棚をひっくり返した。
「うわぁっ!」
「どうしたんだい!?」
僕が悲鳴をあげてしりもちをついた瞬間、ドクターケインは慌てて振り返った。
「荷物が……ごめんなさい」
「それよりも、膝とか打ってないかい? 痣がないか心配だよ」
散乱する荷物を見て僕が蹴躓いたことがわかったのだろう。最初は目を見開いて驚いた様子を目の当たりにしたドクターケインだったが、真っ先に僕の心配をしてくれた。なんだかわざと倒したことが申し訳ない。
ちらりとマシューの方を見ると、僕に向けてひとさし指と親指で丸を作っていた。作戦は成功したようだ。
僕は立ち上がって無傷をアピールした。
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