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決戦
野鳥の鳴き声が闇夜の中で響く。しぃんと静まりかえる街で一つの影が動く。背後に人の気配を察知することもできずにその影は地を這いながら何かをとろうと手を伸ばした。
刹那、
「灯火と水入りバケツの準備は整ったようですね。ドクターケイン」
地面の雑草を踏む音と供にもう一つの影は近づく。
頬に触れる風は湿気を帯びて生ぬるい。今夜は満月のはずだが、厚い雲が覆う所為で月どころか星の光一つ差し込まない。
「これはこれはごきげんよう。ドクター・・・・・・いえ、森の魔女アデレート」
膝に付着した土を払いながら医者は立ち上がる。一見して、穏やかな微笑みを浮かべているが、彼の額から一筋の汗が垂れていることに魔女は気がついている。
単刀直入に言う、と前置きをして魔女は口を開いた。
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