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「私の薬の効能への干渉および悪化させる為、フランクリン家の子息に不当な薬物を摂取させただろう」
敵を真正面に見据えて睨む蛇のような鋭い眼光を目の当たりにした医者は一瞬ひるんだ。
しかし、あくまで平常を装いつつ切り返す。
「随分、不思議なことを仰いますね。時代の遺物の考えは理解し難い」
首を横に振るが、動きがぎこちない。魔女は流れを此方に誘導させると言わんばかりに饒舌に語った。
「最近になり、彼は瓜科の食材が食べられなくなった。彼の両親にアレルギー症状はないため、遺伝は考えられない。近年の医療技術の発達により、成人を超えた者でも検査の結果初めてアレルギー症状を自覚する例も少なくはないが、マシューが生まれた時にはこの町でも積極的に医療検査を行ってきた。年々見過ごされてきたとは考えにくい。また、瓜に対してのアレルギーが後天的である場合も皆無ではない。
しかし、その結論を導く時は他の可能性をすべて除外した場合に限る。今回は残念ながら・・・・・・その他の可能性の一つが真相に当てはまってしまった。」
魔女が言葉を発する毎に仰々しい物言いが少なくなる。始めはフランクリン家の子息なんて呼び方をしていたが、既に普段の呼び方であるマシューに変化している。言い直さないあたり、自身もまた焦燥に駆られている自覚がないのだろう。
「長々しいご託はそこまでにして・・・・・・どうやって僕が彼と接触を図ったと言うのです?」
腕を組みながら医者は悠々と尋ねる。魔女は、スクールの健康診断だ、と短く返答した。
「まさかそれは、年度初めの健康診断だなんて仰るのですか? そこで私が『後に自分が消す為の火』をつける為の準備をしていたと? そりゃあ滑稽な話をありがとうございます」
軽く会釈をしながら肩をすくめる医者は、当然感謝の心などもっていない。言葉だけの感謝を聞き流しながら、魔女は切り込む。
「確かにあんたはスクールの健康診断が終わってから此方へ越してきた。急にこの日だけ健康診断のアシスタントを務めるといっても、顔を覚えられるのは確実だろうな。
だから、同業者を買収した。違うか?」
馬鹿馬鹿しいと言わんばかりに医者は鼻で笑う。返事と受けとった魔女は腕を組みなおし、医者の正面に向かう。
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