その魔女の名は

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魔法も化学も融合させることによって、この世に存在する技術の多くは日々進歩している。つい数日前に発見された病気の特効薬の副作用を抑制する薬が新たに開発されることだってある。商工業を生業とする者達は常に利益を得る為にあくせく働く。 ここは、そんな情勢から少しだけ外れた田舎街。そして、僕を含む植物や動物たちが生活を送るこの森は、そんな田舎町からも少しだけ離れた場所に位置している。ほんの少しだけ足をのばしたいと思うときに立ち寄れる程度の距離感だと思ってくれたら丁度良いのかもしれない。頻繁に行こうとは思わないが、時々ならば行ってやらないこともない。街の住人からの評価はこんなところだ。 この森には様々な動植物が存在するので、研究目的の為に森を訪れる者も少なくは無い。ただ、森の中で乱暴狼藉を働く者に森は容赦ない。過度な植物採集や、動物の狩猟なんてもってのほか。 敬虔な心を持たず、森に入る者には森を守る魔女に罰を与えられる。  子供が興味半分で森に立ち入らせないように、街の大人が流した噂だったが、あながち間違ってはない。 森に住むという恩恵を受ける彼女は森を守る義務があるのだ。  だから、森の仲間である動物も植物も傷つけるような輩を発見次第、懲らしめている。守られた森は彼女を受け入れる。そうして双方の気持ちが循環することでこの森には秩序が保たれている。
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