その魔女の名は

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 丸太を組み合わせた小屋の窓際は非常に日当たりが良い。僕は窓のサッシで羽をおろし一息ついた。暖かい日和の空と同じ色であるはずの僕の羽は、どこか薄く見える。だいぶ昔に彼女に尋ねたら、光の反射の関係だと教えてくれた。  カタンと音を立てて木製のスプーンが皿に置かれた。彼女は満足そうにナプキンで口の端を拭う。今朝は様々な野菜とビーンズを煮込んだスープを食べていた。  煮込んだ野菜は僕も好きだ。柔らかくて食べやすい。何より甘みが増す。薬を煮る要領で野菜も似ている所為か、時々アデレードに分けてもらう食事はどれも絶品なのさ。  不意に薬草の匂いが鼻を擽る。ハーブやミントに近いような刺激的な強い匂い。  小屋の中を見渡したが、薬草だらけの彼女の小屋で、特定の薬草を見つけるのは至難の業だ。
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