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ビルの隙間の小さな公園。
遊具のコンクリート製のトンネルの中を覗き込む。
奴はトンネルの真ん中あたりで膝を抱えて蹲っていた。
何度この光景を見たかわからない。
「ぉい、」
声を掛けると、ぱっと顔を上げた。
来てんのわかってんだろ、なんで毎回そのリアクションなんだよ?
「おっそいよっ!!」
奴は屈んだままトンネルを出口まで移動してきた。
俺が傘を差し掛けると、頬を膨らませて俺をちらりと睨み上げる。
「しょーがねえだろ。仕事なンだからよ?」
「仕事って、直樹お酒飲んでるだけじゃん!」
「ちげーよ、俺の仕事は接客」
「酒呑むのはそのついで。どっちも仕事なんだよ」
「飯食わなくたって金がなきゃ、今のおめぇが住んでる部屋だって、
家賃だって払えねーンだしよ」
「わかンだろ?そんくらい」
コイツ、伊邪也は、憮然としたまま立ち上がり、俺の差し掛けた傘に入った。
見慣れたいつものふくれっ面。
尖らせた唇、不機嫌に前を見据えている。
普通にしてりゃあそこそこ可愛い顔なのに、コイツの表情は大体いつもこんな感じだ。
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