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「…ぁのさ、ドンキとか、コンビニとか、その辺にあンだからさ」
「そのために小遣いもちゃんと渡してあンだろ?」
「こうなる前に、なんでもうちょっと早くナントカできねーかな」
伊邪也は、むっつりと黙ったまま非難がましく俺を見上げた。
目の周りが擦れて赤く滲んでる。
これもいつもの、だけどなかなか見慣れることが出来ない顔。
今、自分がどんな顔をしているのか、伊邪也は知らないんだろう。
真っ白な肌は、ちょっとの摩擦でも変色する。
直前まで伊邪也がどうしていたか、俺にはわかる。
俺は気付かないふりをする。
俺達は連れ立ってまた家路を辿る。
俺の差す傘の下で伊邪也は、目覚めていく新しいその日を静かに眺めている。
これから世間の奴らは新しい1日を始めるんだ。
「…おぃ」
「そっちは駄目だ」
伊邪也の肩を引っぱった。
そっちは東向きだ、正面から朝日を拝むことになる。
伊邪也は大袈裟にため息をつき、方向転換した。
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