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吸血鬼の話をしよう
たとえば、こんな話を信じられるか?
吸血鬼の話をしよう。
映画や小説、フィクションの中で語られる、吸血鬼の生体だか、性質だかは、大体のところ当たってる。
ニンニクが苦手だとか、十字架に弱いだとかは、個人の好みの話だが、例えば、歳を取らないんだとか、夜行性だとか、人に噛みつき生き血を食らうんだとか、血を吸って仲間を増やすんだとか、太陽の光に弱いだとか。
そういうのは大体のところ本当だ。
ついでにいうと、吸血鬼に血を吸われた人間はその吸血鬼の所有物、吸血鬼が言うところの”眷属”ってヤツになる。
なんで俺がこんなことを知ってるかって、それは目の前にいるコイツ、伊邪也がその吸血鬼だからだ。
2年位前のことだった。
今日みたいな明け方の仕事帰り、商店街のシャッターの角に蹲る伊邪也を見たのは。
『…ぁのさ、迷子?』
慣れない仏心を出したのが運の尽きだった。
コイツはいきなり俺の首に食らいつき、気の済むまで俺の血を啜りやがった。
でもって、それが始まりで、今がその延長。
幸いにして俺は吸血鬼にはなってない。
だが良いのか悪いのか俺はコイツの眷属ってヤツで、そんなこんなでコイツの下僕ってわけだ。
今は俺のアパートで同居している。
俺が夜、仕事で家を開けてる間、伊邪也はアパートを抜け出し、その辺をほっつき歩いてる。
でもって、朝が来て立ち往生。
別に店に来て待ってたっていいんだぜ?
何度か言ってみたことはあるが、コイツは俺の職場を嫌ってる。
気ままに夜通し遊び回って、どっかで迷子になってるんだ。
それでいつもの俺の出番ってわけだ。
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