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傘の下
「…ぁのさ、今は折り畳みの軽量のヤツとかさ、あるみてえだしよ」
「一応、念のために持っとけよ?」
「いいヤツ買ってやっからよ?」
「…いらない」
俺のすぐ前を歩く伊邪也の顔はわからない。
だけど多分、ふくれっ面のままだ。
「…迎えに来るの、そんなに面倒?」
「違うって」
「来るよ?来るけどもよ?」
「…万が一、俺になンかあって、迎えに来れねーことだって、あるかも知んねえだろ」
「だから、念のために持っとけよ、…な?」
「なンかって?」
「…なんかだよ」
「不慮の事故とか?いろいろあんだろ」
「俺だって、その辺歩いてりゃ、車に轢かれることもあンだからよ」
「…言いにくいけどよ?俺もいつまでもお前の側に居てやれるわけじゃねーんだから」
「折りたたみ、持ってたってさ、俺が居る時は、いつだって呼んで好いんだからよ?」
「持っとくだけ、持っとけよ?…な?」
俺にしては、これでもかなり優しく言ってやってる方だ。
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