幕開けの3時

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 午前3時――それは、人も動物も寝静まり、あらゆる活動が休みに入っている時間だ。そんな時刻に始まる闘いがある。ペレアライフと呼ばれるその闘いは、地球だけでは無く、様々な惑星から命ある者がやってくる。  今宵も闘争を求め、二つの命がぶつかり合おうとしていた。 「ここか?私の退屈しのぎになるところは。」 「ええ、そのようです。カミ―ボ様、思う存分やっちゃってください。」 「ああ、毎日お前たちのような者と闘っていては、私の腕がなまってしまうのでな。」 「は、はい。で、でも、それはカミ―ボ様が強すぎるからでしょう?常にわたくしたちは全力を尽くしているのですが……。」 「ふん、まあ、仕方あるまい。突然変異で生まれてきた私と張り合える者など一度も出会ったことがないからな。それゆえ、こんな辺鄙な惑星まで、わざわざ来ることになったのだが……、本当に私の血をたぎらせるような骨のある相手と闘うことができるのか……。」 「そうですね……、わたくしたちの星はおろか、近隣の惑星にもそのような方はいらっしゃりませんでしたからね。期待をしすぎるのも、良くないかもしれません。」 「まあ、とりあえずはお前たちより強ければ良い。最低でも、”本気”は出したいところだがな。」 「カミ―ボ様の本気でどれだけの同胞たちが病院送りになったことか……。思い出すだけでも恐ろしい。」 「ああ、あの時はそういう気分だったのでな。少々申し訳ないことをしたが、そういう運命だったのだろう。」 「……恐ろしい。っとそろそろ始まるみたいですよ。」 「ああ、そうみたいだな。私の退屈しのぎになってくれるか、見物だな。」 「レディースアンドジェントルメン!、由緒正しき全生命のみなさん!お元気ですか~~?この地球では、生命活動の休息時間らしいのですが、私たちに睡眠は不必要ですからね~~、全くこんな素晴らしい舞台があるにも関わらず、当の生き物たちは軟弱者で困りますね~~。しかし!このパーティーが開催できるのもそのおかげ!今宵も存分に楽しんで参りましょう~~~!」 「な、なんだ?」 「お~~~っと、今宵の挑戦者は荒くれ者と呼び声高い獣族、”ビースト族”だ~~~。ビースト族は挑戦者の数も多く、いつも名試合も生んでくれますからね~~~。これは、期待大ですよ~~。」 「くっ、なんだこの光は。」 「この場を盛り上げるための重要なアイテムですよ~~。光は注目を集めますからね。今、画面を通してシンカン族の皆様があなたのことを見てますよ~~。ほら、決めポーズとか取っちゃってください。」 「私にそんなものはない。あるとするならば、今から見せる技の数々くらいだな。」 「お~~っと、またこれはキザな発言!これを堂々と言えてしまうのは、なかなかなメンタルをしていますね~~。」 「私は当たり前のことを言ったまでだ。で?私はいつ大暴れできるんだ?」 「まあ、そう焦らずともあなたの対戦者はもう着いていますよ。お、現れたようですよ。」 「あ?なんだ、あの姿は……。」 「お前こそ、見ない姿だな。」 「お~~~っと、これはまた、珍しい!メカニカル族だ~~。争いを好まないとされるあなたがまたなぜ?」 「ああ、無理矢理つれてこられたんだよ。そいつ曰く、俺の技量がどこまで通用するか気になるんだとよ。」 「ほう。また、面白い理由ですね~。自らの意志ではなく、他人の都合だと?」 「ああ、そういうことだ。まあ、やるからには本気でやるがな。」 「まあ、何はともあれ面白い組み合わせですね~~。遠距離攻撃を得意とするメカニカル族、近接戦闘が得意なビースト族、果たしてどうなるのでしょうか~!」 「おい、お前はそのメカニカル族とか言ったな。その種族のなかでは、どのくらいの強さなんだ?」 「どのくらいと言われてもな、比較対象がいないから説明が難しい。」 「いない、とは?」 「俺が他の仲間と比べて強いってことだ。まあ、それがどうしたって話だが。」 「……お前たちの種族は、戦闘を好まないのか?」 「当たり前だ。闘ったところで何も生まれない。失うだけだ。」 「ほう、では戦闘に慣れてはいない、と。」 「まあ。そういうことになるな。あ、ゲームではよくやるぞ。格闘ゲームはめちゃくちゃはまった。」 「ふん。そんなお遊びはどうでも良い。はぁ……、どうやら、期待外れのようだな。私の退屈しのぎにもなりそうにないな。」 「そうかもな。……でも、安心しろ、俺もかなりの負けず嫌いなんでな。」 「雑魚が本気を出したところで、雑魚に変わりは無い。一対一の戦闘において、力以外は何も意味をなさない。」 「……どうやら、俺を見くびっているようだが、後悔することになるぞ。」 「どうやら、両者、熱が上がってきているみたいですね~~。その熱を保ってもらいましょう。もうすぐ、戦闘開始です!戦闘開始まで、10,9、8、7,6,5,4,3,2,1、それでは~~スタ~~~ト~~~~~!」 「先手必勝だな。」 「お~~っと、メカニカル族がレーザーを放つ!しかし、それをやすやすとよけるビースト族!」 「はっ。遅い。」 「逆にビースト族がとてつもないスピードで向かっていく!そして、拳で強烈な一撃をお見舞いしようとするが、それをメカニカル族がバリアで防ぐ!しかし、メカニカル族衝撃で後ろに吹っ飛んでいきます。ここからは、めんどくさいので、略してビース、メカで両者を表したいと思います。」 「ほう、そんなことが出来るのか。」 「くそ、お前なかなか早いな。正直、その動きは初めて見た。」 「まあ、そうだろう。私も私より早いやつに会ったことがないからな。」 「なら、これならどうかな。」 「ここで、メカ、またも同じレーザー放ちます。しかし、またも避けられますが、ここで!連射攻撃です!何本ものレーザーがビースに向かっていきます。」 「レーザーの早さが変わらなければ同じことだ。」 「しかし、たやすく避けていくビース。おっと、ここでメカ攻撃を止めます。」 「これも避けるか。」 「なかなか楽しめそうだな。今のは、良い避ける練習になった。」 「なかなか言ってくれるじゃねえか。これはどうかな!」 「メカ、片手から両手に変え、波状攻撃です!おっと、レーザーの早さも変わっているように見えます。さっきより早くなったり、遅くなったりしているようです。そして、一撃ビースを捕らえました!」 「……ほう。なかなか面白い。久しぶりだ、傷をつけられたのは。」 「これだけ、やっと一発かよ。俺の仲間だったら、もうとっくに白旗上げてるところだぞ。」 「私は生憎出来が良いのでな。では、私からも行かせてもらうとしよう。」 「ビースたちあがり、猛然と向かっていく!私の目には何人も居るように見えます!」 「くっ。一撃、一撃が重い。」 「なかなか頑丈だな。では、これはどうかな。」 「ビース、四方八方からメカを攻撃していきます。メカは何とかバリアで防いでいます。お~~~っと、一撃は入り、メカはすごいスピードで、壁に激突します!」 「まあ、こんなものか。」 「どうやら、単純な力量では俺が負けてるみたいだな。」 「では、降参か?いいぞ、なかなか楽しめたのでな。」 「そんな訳ないだろ。言っただろ、俺は負けず嫌いだって。どうにかしようと思えば、出来なくは無い。」 「ほう。では、お前の全力を見せてみろ。」 「ああ、カロロ!」 「なんだ?」 「おっと、場外から何か飛んできました。あれは何でしょう。余計な者はこのコロシアムに入らない仕組みになっているはずですが……。」 「これをつけるのも久しぶりだな。まあ、でもつけるだけの価値はありそうだな。」 「ああ、どういうことだ?」 「まあ、楽しみにしとけよ。」 「メカ、どうやらあれを装着するようです。私も聞いたことがあります。メカニカル族は専用のレーザー砲のような武器を装着し、パワーアップすると。」 「装着完了。では行くぞ!」 「それで、多少は強くなったか?期待を裏切らないでくれよ。」 「ああ、もちろん。」 「メカ、レーザーを連打していきます!私の目から見てもかなりのパワーアップ具合が見てとれます!早さ、太さ、多さ、どれをとっても遙かにパワーアップしています!」 「ほう、これはなかなか……。くっ。」 「お~~っと、ビースまともにくらったように見えます。壁に激突しましたが、大丈夫でしょうか?そして、それに追い打ちをかけるようにメカ、またもレーザーを放ちます。」 「なかなか、やるではないか。」 「これはいくらビース族一番と言っても、ひとたまりもないのではないでしょうか~~。あれ?今、いたところにビース族が居ません。おっと、どこからともなく雄叫びが……。!上です!上にあれはオオカミでしょうか!?完全なオオカミが空から降ってきます!」 「出来れば、この姿になりたくはなかったところだが。仕方なかろう、お前はそれにふさわしい。」 「ようやく、お前も本気を出してきたってところか。」 「そういえば、ビース族はこのオオカミ姿になることにより、力を増幅させると聞いたことがあります!どんな力を見せてくれるのでしょう。」 「ここからは、ノンストップでいかせてもらおう。」 「ああ、俺もそのつもりだ。」 「両者譲りません。ビースが噛みつこうとすれば、メカがバリアで防ぎ、レーザーを放つ。それをビースもよける!メカの連射攻撃もビースは次々避けていきます!お~~っと、ここで、ビースの体が大きくなりました!メカの5倍はあるでしょうか!」 「ここまでの力を出させたのはお前が初めてだ。ありがたく思え。」 「ああ、そう思いたいところだが、これはやばいかもな……。」 「ビースが猛然と向かっていきます。メカはバリアを駆使しながら、必死に避けています!ビースが押すなか、メカは防戦一方、これは、勝負あったか!」 「でも、的はでかくなったな。」 「おっと、メカは何とか隙をつきレーザーを目に向かって放ちます!ビース少し動きがとまります!」 「俺の全身全霊を込める。」 「おっと、メカの周りに光が集まっていきます。これは、とてつもないものが放たれるのではないでしょうか!」 「俺の全身全霊受け手みやがれ!」 「今宵のパーティも最高でしたな。」 「ああ、まさか、あそこから逆転するとは……。」 「また、あの両者の対決みたいもんですな。次はどうなるか分かりませんぞ。」 「ああ、そうだな。でも、まあ、負けた方はもうあそこに立つことは許されないからな。」 「その規則も撤廃すれば良い者を。闘いなんて一時の運もあるでしょうに。」 「こら。冗談でもそんなこと言って、もしあの人に聞かれたら……。」 「大丈夫。ここは誰も来やしませんよ。そんなことより、次回も楽しみですね。」 「ああ、次回予告では灼熱族対月兎族らしいですからね。」 「ほんと、幕開けの3時という番組は面白い。」    
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