1話

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壮太(そうた)は今、滅茶苦茶にされたい気分だ。 「ふ……ぁ、」 相手は誰でもいい。欲を言えば、ただ乱暴にする人よりは優しさを携えた人の方が有り難いかもしれない。その方が心が満たされる。だけど、一夜限りの相手でいい。それ以上の関係は求めていない。今、この欲を満たしてくれさえすればいい。深い関係は面倒なので却下だ。そんな都合のいい人間がいないだろうか、と思いながらふらり、とバーへ向かった。勿論普通のバーではなくて、そういうことを求める人間を探す場だ。カウンターで一人ちびちびカクテルを飲んでいると、男に声を掛けられた。隣に座り、男はとても心配そうに壮太を見てきたが、目的を知ると、男は壮太の手を優しくとってくれた。 「も、無理……」 その優しさとは裏腹の行為に壮太はそろそろ限界だった。ベッドに寝かされ、両手を手錠で拘束され、目隠しまでされてしまって。何も見えないが故に快感をより深く感じてしまう。「だめだよ、足、開いて」 そう言われ、閉じかけた足を再び広げる。壮太は既に裸だけれど、目の前にいるその男は、見えないから確認はできないが、おそらく一つも衣類は乱れていないのだろう。後孔には先程からずっとバイブを挿入されて、微弱な振動が壮太を襲う。触れられるわけでもなく、ただただ、待てを強要される。 「イきたい……お願い……」 「そう」 ペラリ、と本が捲れる音が聞こえた。壮太のペニスの根本にはコックリングを付けられているため自力での射精は許されていない。放置プレイの存在は知っていたが、実際体験するとかなりきつい。こちらはこんなにも辛い思いをしているというのに相手はきっと、何食わぬ顔で本を読んでいるのだから。 「強めようか?」 「やあっ、あ、ああああ―――ッ!」 バイブの振動が強くなった。刹那、頭の中が真っ白になり、体全体がびくびく、と痙攣した。一体何が起きたのか分からない。体が火照って火が出そうなくらいに熱い。 「上手に雌イキできたね」 そう言いながらも聞こえてくるのは静かに本を捲る音。最奥がどうしようもなく熱い。早く、その熱いもので中を搔き乱してほしい。乱暴でいいから触れてほしい。そして、己の欲望を思う存分解放したい。 「あ、ああ、だめ、いってる、のに、あああ!」 中イキしたというのにバイブの振動を緩めてくれず、その初めての快感が持続的に壮太を襲う。目隠しは既に汗と涙でぐしょぐしょだ。助けて、イきたい、と懇願し、だけどその声に力はこめられず、きっと相手にはこの深刻さが伝わっていないだろう。否、例え伝わっていてもわざと無視されている。本当に、限界寸前だった。 「イ、きたい……お願い、なんでもするから、ねえ!」 「仕方ないね」 パタン、と本を閉じる音が聞こえた。男の気配が壮太に近付く。ふわり、と肌に触れた大きな掌の感触にぞくりとした。胸の突起を甘噛みされて、まるで女であるかのような、自分でも聞いたことのない声をあげてしまう。 「本当に限界だね」 「だから、言ってるだろ、さっきから……!」 何度も何度も訴えたのに、はいはい、とスルーし続ける男に腹が立って仕方ない。文句を言いたいところだけど、今はそれより、この体の熱をなんとかしてほしい思いでいっぱいだった。ずるり、とバイブが抜かれた。目隠しも外されて、ようやく視界を取り戻した。肩で息をしながら、眼前の男を睨むがくすりと笑われただけだった。 「すごいね、どろどろ。女の子みたい」 「いいから、早く!」 「注文が多いね、君」 そう言うと、男はズボンのチャックを下し始めた。現れたその大きな男根に、思わずごくりと生唾を飲み込む。早く、その熱を感じたい。ほしい。ただただ、それがほしい。 「どうしてほしい?」 人を窮地に追い込むのが趣味なのか、と文句を言ってやりたくなるくらい憎たらしい。言いあぐねたが、きっと言わなければここで行為は終わってしまう。最初から拒否するような選択肢は与えられていないのだ。 「入れてほしい。奥まで突いて、滅茶苦茶にしてほしい」 「了解」 あとはもう、詳しくは覚えていない。壮太はただただ声を上げ、その襲い来る快感と熱に身を任せた。頭の中が真っ白で、まるで獣のように、自ら快感を求め続けて腰を振った。壮太がうっすら覚えているのは目の前の男が楽しそうに口角を上げてこちらを見つめてくることくらいだった。
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