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番外編『ゼロ回目の二人』後半 ※R18
「わかった」と言ってシャツを脱ぎ捨て、ソファに座る睦月の前に立つ。
まじまじと見つめられて、柄にもなく身体が火照る。
「未咲、キレイ」
睦月の小さな手が、胸の辺りにペタリと触れる。撫で擦られて乾いた肌が次第に湿り気を帯びていく。上がる息を堪えながら、下から湧き上がるみたいに腰がむず痒くなってくるのが分かった。
「睦月、くすぐったいから」
「じゃあ、これは?」
睦月の唇から赤い舌が突き出され、その突起が臍の下をペロリと舐め上げた。
「――ッッ!」思わず、ピクンと身体が跳ねる。
「未咲、気持ちい?」
「い...気持ち良いけど、もういいよ。あと、俺...やるから」
堪らず身体を剥がそうとするも、不満満面に頬を膨らました睦月が俺の顔を見上げる。
「未咲、そーゆーとこだよね」
「え?」
むくれる意図が分からず聞き返すも、睦月はガン無視のまま俺のベルトのバックルをガチャガチャと外し、パンツのジッパーに手をかけた。
「ちょっ、待て待て待て。お前はそんなしなくていいから」
「なんで?」
既に出来ている下着の染みに、睦月がそっと口づける。そして、固くなりかけた股間に甘い息を吹きかけると、包み込む様にして唇を押し当ててきた。布越しに、睦月の口の中の熱がジンジンと伝わる。
「睦月、俺...風呂入ってない...から」
「いい...未咲のにおい好き」とろけた下着の中が暴かれる。
「睦月、勘弁して」
「ダメ。僕も未咲を気持ちよくしたい」
下着からズルリと引っ張り出されたものに、睦月が舌をからませた。滴る液が、ピチャピチャという淫靡な音と共に舐めとられる。
「うっ....」
思わず漏れる声に、睦月が嬉しそうに微笑んだ。
「未咲の、大きくなってる。――入るかな」
一瞬躊躇するも、睦月は唾液でぬるぬるになったその口を開き、固くなったそれを咥え込んだ。が、睦月の口は小さい。整った小さな顔に合わせて、顎も歯列も全てが小作りなのだ。
先端が喉を擦ると「ぅんんッ――」と絞り出される苦し気な声と共に、溢れる涙が睫毛を濡らす。俺のもので口をいっぱいにしながら顔を赤くして泣くその姿が、下っ腹にジンジンと響く。
頭を押さえ付けて、苦しがるその顔に無理やり股間を押し付けたくなる暗い欲求が膨れ上がる。が、そんな事はしない。セフレには、余裕でしてたけど――。俺は好きな子には、いや、好きな子だけにはとことん優しくしたいのだ。
「睦月、ガン勃ちだから、も...いい」
下顎から喉元にかけて指で擦ってやりながら、唾液塗れの口を外させる。
「けど、僕もっと未咲を――」
「いいから。もう抱かせて」
「――っっ」
睦月が言葉に詰まる隙に、その華奢な身体をお姫様抱っこで持ち上げてベッドルームに連れて行く。フルチンで何やってんだかと我ながら思うが、恥ずかしそうに俺の胸に顔を埋める睦月を前に、最早止められる訳がない。
ゲスト用のベッドには、新品のシーツが敷かれたままになっていた。ラッキーと思うと同時に、洗濯どうすっかなと現実的な課題が頭に浮かぶ。
「明日、考えよう...」
「え?未咲なんか言った?」
なんでもないよと言って、睦月の身体を宝物みたいに大事に横たえる。
覆いかぶさる様にベッドに上がると、糊の効いたシーツの冷たい感触が掌に伝わる。
「睦月、寒くない?」
「寒くない。からだあつい」
――何そのひらがなッ。
萌えと煽りに堪えながら、汗ばんだ額に貼り付いた前髪をそっと掻き分けてやる。露わになった睦月の可愛らしいおでこに優しく唇をあてる。頬に、首筋に、顎にとキスを浴びせながら、着ていたニットをたくし上げた。
既に赤くなりかけた乳首を舌の先で転がすのに合わせて、睦月の息が次第に上がっていく。更に唾液でその膨らみを濡らしながら、もう片方を爪先でピンと弾くと、「んぅッ」と漏れ出た声と共に身体が小さく跳ねた。
そのまま下腹部に向かって舌を這わせる。唾液の糸を艶めかしく纏わせながら、白く薄い睦月の肌がうっすらピンクに染まっていく。
「んんッ...。あッ....」
舌の動きに刺激される様に、腰がビクビクと揺れるのが分かる。
溢れる声を抑えようと、睦月が自身の下唇を噛み締めてしまう。
「睦月、傷になるから」
その小さな口を開かせて、人差し指と中指を差し入れる。唾液と唇から漏れた血液に塗れた指先が熱くなる。
そんな風に熱に翻弄されながら、何故か頭は妙に冴えていくのが不思議だ。
「――睦月、もっと気持ち良くしたい」
下唇の血液を舌で舐めとり、了承を得る様に優しくキスをすると、睦月が涙目でコクンと頷いた。
腰を持ち上げて、パンツと一緒に下着を剥ぎ取る。剥き出しになった股間は既に固くグショグショになっていて、先端からねっとりとした糸を垂らす。
色素の薄い睦月のそれは子供みたいに綺麗な色をしていて、俺は、壊れない様に大切に口に含む。舌で裏を舐めながら、唇で上下にジュボジュボと扱いてやると、口の中で体積がグンと増すのが分かる。
「やぁッ...ダメぇ」
快楽から解放されようと、睦月が脚をバタつかせながら俺の頭を手で押さえ、股間から剥がそうとする。が、言う事を聞く訳にはいかない。睦月の細い両手首を片手で掴んで抑え込み、もう片方の手で更に激しく擦る上げる。
「未咲、ダメ...でちゃうッ」
「いいよ。一回イきな」
「あッ...」
ブルっと睦月が身体を震わせると同時に、パンパンにはち切れそうなそれをもう一度口に含み、白濁した液を余す事なく受け止める。
本来なら好きな子のものは飲み下したいのだが、今日は準備が万全ではない。掌に吐き出して、潤滑液代わりにさせて貰う。
射精したばかりで身体をピクピクと震わせる睦月の脚を持ち上げ、後ろを露わにする。
「未咲...僕もう...」
既にヒクついたお尻に即席のローションを塗りたくる。痛がらないか不安になったが、ぷつりと指を差し入れた途端、睦月がひだを震わせながら吸い付いてきた。
イった後の睦月のお尻は、グチャグチャとかき回すと信じられないくらい熱くなる。この中に挿れたら直ぐにトロけてしまいそうだ。頭の中が「挿れたい」に支配されていくのを抑え込む様に、丁寧に睦月をほぐしていく。
「み...みさき...お願い」
「痛い?指、抜く?」
「ちが...う、もうムリ...来て」
「けど、まだキツいから」
「みさきッ、お願いだからッ...」
涙ながらに訴える睦月の頬にキスをして、ガチガチになったものをゆっくりと壊さない様に挿し入れていく。
「あッ....ああ......ッッ」
糸を引く様に声を上げながら小刻みに震える睦月の身体を、包む様に抱き抱える。グズグズになっているとはいえ、捻じ込んだ睦月の中は熱く吸い付き、食い千切りそうな勢いでキツく締め付けてきた。
気持ちの良さに頭が白くなる。が、睦月を置いていく訳にはいかない。
「睦月、顔隠さないで。目開けて」
顔を覆う両手を優しく振りほどき、指を絡める。瞼を舌でなぞると、睦月はようやく浅い息と共にうっすら瞳を開く。
「僕、気持ち良すぎて...すごい恥ずかしい顔してる」
「恥ずかしくないよ。キレイだからもっと見せて」
尚、顔を背けようとする睦月の唇をかぶり付いて奪う。甘い唾液を味わいながら、上に突き上げる様に腰をうねらせると、睦月の身体に電気が走るのが分かった。
「ん――――――ッッ!!」
見開かれた瞳から涙が溢れる。塞がれた唇から唾液と共に喘ぎ声が零れる。
一度イった後に睦月のイイところをこうして擦ると、いつもあっという間に果ててしまう。
まだ中に入っていたいが、上り詰めた熱を気持ちよく出させてやりたい。既に固くトロトロになった前を扱こうとして伸ばした俺の手を、睦月が掴んだ。
「どうしたの?痛い?」
涙を浮かべた睦月が、違うと首を振る。
「何かヤだった?睦月、言って」
「ちがう...みさきも...」
「うん」
挿れられた部分を小さく痙攣させ、上がる息の合間に睦月が訴える。
「みさ...きも、気持ちよくなってほし...」
「......」
予想外の欲求に少しだけポカンとしてしまう。そして、睦月にそんな風に思わせていた事に変な焦燥を覚える。
「――俺、睦月とのセックス気持ちいいよ」
「うそ...」
「うそじゃないって」
「だって、未咲...いつも入れて全部くれないもん...」
――そこかぁ...。
最初にセックスした時に睦月が怖がったのが、いつも頭に残っている。痛い思いも怖い思いもさせたくない。気持ちよくなって、俺とのセックスを好きになって欲しい。それだなんだけど。
「うそとかじゃなくて、俺も気持ちいよ」
「僕がイヤなの」
”イヤなの”という言葉に、文字通り頭がガーンとなっているところへ、睦月が思わぬ奇襲をかけてきた。
「僕のこと...ちゃんと未咲のものにして」
「え?」
「中...未咲の形になりたい。もっとメチャクチャにして、ちゃんと未咲のものにして...」
完全に頭のネジが弾け飛んだ――。
これまで大切に、宝物みたいに睦月を抱いてきた。それで満足だったし、気持ちいいのも嘘じゃない。
が、愛おし過ぎる睦月の言葉は、そんな理性の幕を破壊するのに十分だった。
「睦月――」
「未咲...?怒ってる?」
「怒ってない。けど、そんな事言ってどうなっても知らないよ」
獰猛な空気に睦月が一瞬たじろぐ。が、構わず身体を反転させ、うつ伏せにしてその頭を枕に押し付ける。
こんな犯すみたいなやり方は本意じゃない筈なのに、快楽が身体を突き抜ける。
「未咲!?――あッ」
尻を持ち上げて、その熱い穴の中に挿入していたものを更に深く挿し入れる。中の肉が押し出そうともがくが、許さないとばかりに押し進む。
「あッあッ...あああッ」
身体を震わせて喘ぐ睦月に体重をかけて抑え込む。ギチギチと呑み込まれていくその快感に、既に頭はまっ白だ。
先端が肉の最奥を切り開き、目の前に火花が散った。
「睦月...根本まで入った」
苦し気に微笑む睦月の頬に、そっとキスをする。
「苦しくない?」
「苦しいけど、嬉しい」
「――睦月、動くよ」
頷くのを見届けて、腰を強く打ち付ける。
粘膜が擦れて、パチュパチュと卑猥な音が部屋に響く。
「あああああッ、未咲ッ、未咲ッッ」
喉が壊れんばかりに睦月が声を上げるが、幹を前立腺に擦りつけながら、先端で深い部分を抉り続ける事を止めない。
「未咲ッ、死んじゃうッッ」
細い身体に圧し掛かりながら、背後から睦月の耳の中に舌を差し入れる。耳の穴を蹂躙しながら後ろを犯し続ける。
「全部良くしてやるな」
抱きかかえる様にして乳首を弄びながら、もう片方の手で既にパンパンになった前を強く扱く。
「未咲、好き...未咲...みさき......」
睦月がうわ言の様に俺の名前を呼び続けるだけになる頃、高みが見えてきた。
「睦月、もうダメ...イきそう」
「未咲、僕も一緒に...」
――愛してる。大切にしたいけどグチャグチャに壊したくなる俺の宝物。
顔を向けさせて強く唇を吸う。
手の中で睦月が溢れ出し、痙攣する肉の中で俺は果てた。
気が付くと、窓の外がうっすらと明るくなっていた。遠くの空がオレンジに染まり、波の音が微かに聞こえる。
あの後、二人とも気を失った様に寝てしまったようだ。いつの間にか夜が明けていた。
ペットボトルの水を取りに行ってベッドに戻ると、睦月が目を覚ましていた。
「ごめん、起こした?」
再びベッドに潜り込みながら、水のボトルを睦月に渡してやる。
喉が渇いていたのだろう。勢いよく飲んだ睦月の口元から溢れた水が滴る。舌で舐め取ってやり、そしてふんわりと優しくキスをした。
「未咲」
「なに?」
「すごく...気持ちよかった」
「俺もだよ。乱暴にしてゴメンね」
睦月はフルフルと首を振ると、恥ずかしそうに「また、あんな風にしてね」と小さく言った。
可愛すぎて、シーツに包むようにしてギュッと抱きしめてしまう。
「未咲」
「今度は何?」
「ありがとう」
「――何が?」
シーツの中に顔を埋めながら、睦月がもそもそと言う。
「僕の事、見つけてくれて」
それが昨夜の迷子の事なのか、もっと観念的な意味なのかは分からなかったが、俺の答えは一つだ。
「何時だって、何度だって迎えに行くよ。俺は、睦月を見つけるのが上手いんだ」
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