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第三十八話(挿絵付)
14:34
東雲 聖
未咲、これを君が読んでる頃には...なんてクソダサい事は言いたくないけどさ、でもまぁ、そんな感じだよ。俺はどうやら死んだっぽい。ウケるよね。
享年十九歳ってスゴくない?若すぎでしょw。
けど、あの時、未咲が大人しく俺に刺されてくれてたら、仲良く十七歳で死去だった訳だ。あ、言い忘れてたけどさ、未咲を殺した後で俺も死ぬつもりだったんだよ。健気でしょ?
なんで、こうなっちゃったんだろうな。自業自得と言われれば、それまでなんだけど、二年は長かったよ。
あんなセックス三昧だった俺が、完全な禁欲生活だぜ?
最も、性欲なんかも湧かなかったんだけどさ。自分でも驚くよ、だってこの俺がだよ?
――なんだか、纏まらないな。
順を追って話すから、最後まで付き合ってな。
そもそも俺が、この窮屈な生から解放されて、最期のメッセージを送れてる時点で――どうやって送ってるのかは俺にも分かんないんだけどさ、未咲の記憶は戻ったって事でしょ?あの、忌々しい佐東との記憶がさ。
俺も、ツマンない取引したもんだよ。
未咲を解放しろなんて、ポッと出のくせに言ってくるからさ、頭キちゃったよ。代わりに美人局まがいの手伝いさせて、更に、未咲にバラすとか脅迫してみたんだけど、アイツ怯まないんだよな。
会えなくても、別れる事になっても、未咲を守るとか言っちゃってさ。ガチで、ムカついた。
俺は浅はかだからさ、未咲には自分と同じ所に降りてきて欲しかったし、俺と同じくらい汚れて欲しかったんだと思う。
だって、寂しいじゃん。俺、独りだからさ。
だから、写真もバラ撒いた。それに関しては後悔も無いし、謝罪もしない。
だって、未咲を縛る手立ては、もうそれくらいしか思いつかなかったんだ。
なのに、佐東の誘いにはホイホイ乗って外に出てきちゃうんだもんな。
写真の事聞きつけた佐東がクラブで嗅ぎまわってたからさ、何日か張ってたら、まんまと未咲と落ち合っちゃってんの。
なんか、俺、頭真っ白になっちゃってさ。気が付いたら、未咲のこと刺してた。まぁ、自分も後から死んじゃえばいっか的な、そんな感じで。
けど、そうはならなかった。
またしても、佐東にやられたよ。普通するか?”神さま”と取引なんてさ。
俺は、写真バラ撒いた事を悔いて自殺したけど失敗して病院送り、みたいなワケ分かんない設定になっててさ。後悔なんかしてないのにな。
”神さま”は、なんで俺を直ぐに殺してくんなかったのかね?一応、罰が当たったのかな。
でも、そのお陰で最期に未咲に会えた。
病院、来てくれて有難うな。嬉しかったよ。
未咲、あんま変わってなくてさ。相変らず髪跳ねてるし、シャツしわしわだし、イケメンなんだからちゃんとしろよと思ったよ。
俺なんか二年間も点滴だけだから、肌とかカサカサだったろ?
未咲には、出会った時みたいなピカピカで可愛いらしい俺を見せたかったのにさ。残念。
ねぇ、未咲、あの頃は楽しかったな。
俺が、休み時間毎にしつこくちょっかいかけても、未咲ってば全然取り合ってくんなくてさ。どうしたら、コイツ攻略できんのかなーなんて、俺も躍起になったりしちゃってな。
――けど、優しいからさ、未咲は。
俺みたいのに引っ掛かった挙句、刺されるわ、記憶抜かれるわで、笑っちゃうよ、ホント。
ごめんね、未咲。
未咲は、俺が未咲の事を本当には好きじゃないみたいに言ってたけど、どうかな。自分でもよく分からないよ。
ただ、俺は上手く人を愛する事が出来無いからさ。こうするしか無かったんだと思う。
まぁ、ウダウダと何を言ったところで、最後に勝つのは絶対的に想いが強い奴の方だからさ。俺は、負けを認めて退場するよ。
でも、思い出だけは俺だけのモンだから、一緒に持って行くね。
有難う、未咲。
そして、バイバイ。
ちゃんと生きて、幸せに。
なんてな。
ホント、笑える。
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