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人目を避けたい私たちは、落ち着ける場所を探して校内を彷徨った。
でもうろうろと歩き回れば回るほど、ギャラリーは増え。それも仕方の無いことだ。だって私の横を歩いているのは、こんなに格好良い、見鐘台の王子様。
「あはは、参ったね」
「うん…」
「みんな、ハルカのことが気になるみたい」
「ええっ?違うよ、鷹矢くんでしょ?」
「だって僕は、昨日解放されたはずだろう?」
「あ…」
そうだ。彼の行くところ行くところ、あまりに人が集まってしまうものだから、昨日の放課後のあの告白大会と引き換えに、彼は安寧を手に入れたはず。
「…ハルカ、みんなになんて呼ばれてるか知ってる?」
「え?私?」
あだ名のことだろうか。皆目見当もつかない。どうしよう、今回のことで絶対悪目立ちしているだろうし、何かとんでもない名を付けられていたら。
「じゃあ、僕は?」
「王子様…」
くすぐったそうな顔をすると、鷹矢くんは右手の指をぴんと伸ばして揃えて、それを左胸に添える。それだけでも神々しいのに、そうっと瞼を閉じて、首だけで恭しく一礼。
「だからハルカは、シンデレラ」
「ええっ!?」
びんっと、髪の毛の先まで驚いてしまった。
なんて、畏れ多い。私があの、うそ、毎晩絵本からやわらかく微笑みかけてくれる、お姫様と同じ名前を、拝してしまうなんて!
「ははっ、その反応、かわいい」
精巧な硝子細工のよう。そんな睫毛を一本ずつ丁寧に寝かせて、弧を描く。束ねた日の光が真上からキラキラ。それは彼のためにあるような、輝き。
見とれたから?照れたから?頬がこんなに熱いのは。ただ分かるのは、どちらにしても、彼のせい。
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