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モデル
「…大丈夫、ハルカはそのまま、自然にしてくれてたらいいよ」
「…それでいいの?」
「だってハルカはこんなに、優しくて、かわいくて、…一緒にいると、なんだか落ち着くんだ」
王子スマイルで、臆面もなくそんなことを言うものだから、私はふらっとしてしまう。そう、思い出しただけでも。今だってほら、熱、出そう。
役だと分かっていても、私に向けられたものだと錯覚してしまう。こんなにどきどきして、もっと一層好きになる。恋愛ドラマの女優さんたちは一体どうやって、こんな気持ちを脱いだり着たりしているんだろう。
魔法使いのおばあさんが綺麗なドレスを纏わせてくれた、これからという場面で。私は華やかな姿のシンデレラへ頭から突っ伏した。
今日は昨日以上にだめだった。まだどこか夢のように感じてふわふわしていた昨日よりも、一緒にお昼を食べて、放課後も帰るまで少し話をして、そんな今日のほうが彼を肌で感じてしまい、ここは終始ばくばくで、もう集中できなかった。
日課のシンデレラの時間も今夜は、ただ文字を目で追っているだけ。諦めてそっと表紙を閉じた。そこで微笑むのは、あの日、鷹矢くんと初めて会ったとき、泣いていたシンデレラ。今はもちろん涙はなく、幸せそうに笑顔を浮かべて。
私は、あなたになれるかな?
今はまだ、役だけれど。それでも、眺めるままでいるよりは、きっとずっと、ここを満たしていけると思うから。
きっといつか、私も。あなたみたいに、笑ってみせるよ。
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