第1レース

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『やっちゃいましたね……』 いつもの電車を見送った俺に茉莉奈が声をかけてくれたんだ。びっくりした俺は冷静を装って返事をした。 『そうですね。こんな偶然あるんですね……』 『『あの……』』 少し間があいて、2人の声が重なった。自然と笑みが溢れた。 次に来た電車に乗り込み、降りる駅が来るまでずっと話していた。名前やお互いの呼び方。同い年って事もびっくりしたなぁ。 控えめに言っても普段の時間の半分もかからないくらいの間に目的地に着いた気がする。それ程までに過ぎる時間は早かったし、今まで幾度となく見た電車の外の景色が全く違って見えた。 それからは毎朝、茉莉奈に会うのが楽しみになった。食事の好みもインドアな趣味も似ていた。まさに理想の女性だった。
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