第1レース

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まだ、着慣れていないスーツの感じ。逃げ惑う恐怖の表情。注射器を刺された時のもがき苦しむ姿。叫び声。とても演技のように見えない。 これが本当にここ日本で行われていることなのか?映像を見ても未だに受け入れられずにいた。 『断じて作り物ではない。今年の新成人およそ120万人。その内、男性割合60万人超のうち種付できる優秀者として残ったのは…』 一体何人が生きられる? 言葉の続きを待った。それは希望を打ち砕く数だった。 『1人だ』 「まじかよ…はぁ…はぁ…」 やばい。体が震える。それに息苦しい。ぼんやりとしか考えたこともない死が急に俺の前に近づいてきた。まだまだ、先の事だと思ってた。それこそ他人事のように思っていた。 死ぬとかより先に茉莉奈とは2人の将来の事ばかり話していた。それなのに。握手できる程の距離に死がいる。まるで友達のように。 こんな時に?いや、こんな時だからだろうか…茉莉奈に会いたいよ。
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