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(6)骨と皮の女
(女は死体を見て言った)
(鼻から顎まで蛆虫、蛆虫)
(私も死んだらこうなるの?)
(牧師は言った、もちろんさ!)
ルーシーという少女の話だ。
ある日、ルーシーは教会で罪の告白をした。
恋人と心中して自分だけ生き残った、と。
ルーシーには恋人がいた。
妻と子供がいる男だった。
恋人は妻と別れるつもりはなかった。
もちろんルーシーとも。
ルーシーは悩んだ末に恋人と心中することにした。
恋人の意思は定かではない。
ルーシーは恋人を毒で殺した後、自らも毒を煽り意識を失った。
・・・どれくらいの時間が経っただろうか。
ルーシーは目を覚ました。
自分が生きていることに気づくと同時に、恋人が死んでいることに気がついた。
恋人は、恋人の姿をしていなかった。
便や臓物を垂れ流し悪臭を放つそれは体中に蛆虫を這わせていて、蝿がぶんぶんと飛び回っていた。
ルーシーは目を背けた。
そこに愛はなかった。
恋人を置き去りにして、ルーシーは骨と皮だけになった体を引きずりながら家を出た。
罪の告白を終えて、ルーシーは牧師に問いかけた。
私も死んだらこうなるのですか、と。
もちろん、と牧師は答えた。
そしてルーシーは、姿を消した。
違う町で違う名前で暮らしているとも、自ら命を絶ったとも言われている。
ただルーシーは、もう誰かを愛することはないだろう。
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