(13)小さな旦那さま

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(13)小さな旦那さま

(私の小さな旦那さま) (親指よりも小さいの) (小さなお馬を買いましょか) (小さな靴下買いましょか) (可愛いお鼻を拭いたげる) (小さなハンカチ買いましょね) ユノという少女の話だ。 ユノは、普通の少女だった。 ユノには愛しい旦那さまがいた。 旦那さまの名前はテル。 親指よりも小さい小人だそうだ。 ユノはテルよりも体が大きいことを気にしていた。 いつかテルが小人の女の元に走るのではないか、といつも不安を抱えていた。 テルに捨てられないように、とユノは献身的にテルに尽くしていた。 食事に着替え、下の世話まで。 夜の生活は知らないけれど、まあ夫婦だしね。 しかしユノの不安は的中した。 ある日、テルは浮気した。 相手はもちろん、小人の女。 テルのハンカチには、それはそれは小さなキスマークがあったそうだ。 ユノは怒った。 とても怒った。 あまりの怒りに、ユノはテルを食べてしまった。 丸呑みであればテルは生きていたかもしれない。 しかしユノは、テルを噛み砕いてしまった。 テルに贈った服も懐中時計も、ユノは全部飲み込んでしまった。 テルに贈った小さな馬も食べてしまった。 ユノ曰く、馬がテルの魂を連れてしまわぬようにとのこと。 全てを飲み込んだユノは、満足気だった。
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