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ラーメン
憧憬の味は私にとってはホームセンターのラーメンだ。
新しくできたホームセンターのフードコートの古びた味の。
醤油ラーメンとは名ばかりで、なんとなく化学調味料的な鋭い旨味が舌をねぶり優しく陶酔させてくる、あれ。
今となっては珍しいほどで、ラーメン屋はまともで工夫あふれるラーメンばかり作る。
健全なラーメンを。意欲的なラーメンを。
だから不健全なあの味はもう、深夜にくたびれたトラック運転手が休憩していくような店にしかないのだ。
世の中は健康で健全になっていくけれども、きれいな水に棲めない私たちは、化学調味料のスープに没入して深いところに沈んでいたく思う。
でも袋麺を買って添付のスープにオイスターソースを軽くぶちまけてやると、あの頃の風の色を思い出す、そのくらいの味にはなるから。
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