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突然、家の電話がなって、羽柴は椅子から転げ落ちそうになるほど驚いた。
電話のディスプレイを見ると、学校からの電話だと分かる。
時刻を見ると、いつの間にか九時を過ぎていた。登校時間になっても学校に来ない羽柴に、おそらくは担任が掛けてきたのだろう。
一瞬受話器に手を伸ばしたが、羽柴はその手をすぐに引っ込めた。
電話に出たところで、聞こえる言葉は限りなく少ないのだ。これでは会話は成立しない。
呼び出し音と、断片的なアナウンサーの声だけが聞こえる中、羽柴はゆっくりと言葉を発してみた。
「ら 、 ん」
いよいよ、ら行、わ行まで来てしまった。
もうこれ以上、聞こえなくなる声はない。
もう後は、聞こえるべき声しか聞こえない。
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