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店に向かう途中でも、すれ違う人々の声が時々耳に届く。
「き」「し」「い」「い」「だ」「い」「い」「た」「で」「す」「て」「ん」「し」「い」「ぎ」……
途切れ途切れで、まだ言葉の体をなしていない。だが、それも今だけの事だ。
店員の声、客同士の会話、スマホで話す人、それらが混沌と存在する場所まで移動すれば、おそらくそれは言葉として飛び込んでくるだろう。
そのメッセージはきっと「だいきらい、しんで」なのだろう。
分かっていても、羽柴はその歩みを止めることはない。
これは贖罪なのだ。
いや、こんな事で許されるとは羽柴も思ってはいない。
それでも、自分の罪は、死をもって、あるいは自身の精神崩壊をもって償うべきだと思っていた。
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