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理解
死後、小林は後悔していた。
彼女は実は自殺ではなかったのだ。
その日、小林は自室のマンションのベランダから夕日を見ていた。その方角には羽柴の家もある。
羽柴からのいじめの原因も小林は理解していた。もちろん悲しいに決まっている。でも、今だけの我慢だと自分に言い聞かせていた。
夕日が沈みかけた時、ふと小林は屋上から身を乗り出して、羽柴の家を探そうと思った。
もう少しで見えそうなのだが、目の前のビルが微妙に邪魔をしている。
そうなるとますます小林は、羽柴の家を見つけたいと思った。見付けられたら何かが変わるかもしれないと。もちろんそこには何の根拠もない。
ただ、子供心に勝手にそう考えただけだ。
ひざがフェンスの上に出るまでよじ登り、ようやく羽柴の家の屋根が見えた。
嬉しくなって、全身の力が少し弛緩した。
‥‥‥小林は、目の前に自身の体が血まみれで横たわっているのを俯瞰で見ていた。
(ああ、私はあそこから落ちてしまったんだ)
自分の体と自室とを交互に見ながら、小林は何故だか冷静に現状を把握していた。
つい最近、これと似たようなシチュエーションのドラマを見ていたからだ。
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